第61話

「それにしても……」


 俺はテーブルの上に置かれている大量のクレープ生地を見て思った。

 これ、どうするんだ?

 作りすぎだろ……。


「なあ、陽彩。そろそろ、作るのやめないか?」

「え、どうして?」

「だって、これどうするんだ……」


 俺はテーブルの上のクレープ生地を指さして言った。


「どうするって、食べるに決まってるでしょ。お母さんとお姉ちゃんもいるし」

「え、二人ともいるのか?」

「いるよ。言わなかったっけ? 二人とも自分の部屋で仕事してるよ」


 まじか。てっきり、二人ともいないものだと思ってた。

 いるのか。そうか。なら、この量でも大丈夫か。と、一瞬思ったが一人何枚食べることになるんだ?


「そんなに心配しなくても二人とも甘いもの好きだから、翼が美味しいクレープを作ってくれれば大丈夫だよ」

「俺が作るのは前提なんだな」

「だって、翼以外にあの二人が満足できるクレープを作れる人はいないもん!」


 陽彩は首を少し傾けて、てへっと舌を出した。

 最初から俺に作らせる気だったのか。はぁ~。と俺はため息をついた。


「てことで、よろしくね。翼!」

「分かったよ」

「じゃあ、二人とも呼んでくるね~」


 そう言って、陽彩は二人を呼びに部屋に向かった。


「さて、作りますか。二人とも手伝ってくれない?」

「いいわよ」

「は~い」


 俺は雛形と有川と協力して、十数個のクレープを作っていった。

 材料があんまりなかったので種類はあんまり作れなかった。半分を作り終えたところで二人を連れてきた陽彩がリビングに戻ってきた。


「わぁ~。美味しそうなクレープがたくさん!」


 桃が顔の前で手を合わせてはしゃいでいた。

 

「ほんとね。ちょうど、甘いものが食べたかったからよかったわ」


 彩は椅子に座ってキラキラと目を輝かせていた。


「二人ともたくさん食べてね。味は保証するよ」

「なにそれ、あんたが作ったわけじゃないんでしょ!」

「それは、そうだけど!」


 彩は声を出して笑った。


「彩さん。久しぶりで~す」

「お久しぶりです」

「久しぶりね二人とも。いつも陽彩と遊んでくれてありがとうね」


 雛形と有川は彩に会ったことがあるのか、挨拶を交わしていた。

 やっぱり、お母さんって歳には見えないよな。俺がそんなことを思ってみていると、彩と目が合ってニヤッと笑った。


「それで、あなたが翼君ね。ようやくちゃんと話ができるわ」

「はい、初めまして。獅戸翼です。よろしくお願いします」

「まぁまぁ、そんなにかしこまらないで。陽彩の彼氏なんでしょ?」

「ちょ!? お母さん!?」

「あら、違った?」

「あってるけど、いきなりすぎ!」

「いいじゃない。別に、分かってたことなんだから」


 なんだか、大学生みたいなノリの人だな。

 かしこまるなと言われてもなぁ~。陽彩のお母さんにそれは無理って話だろ。


「そんなことはいいから、早くクレープ食べて!」

「桃。この子照れてるわよ。可愛いわね」

「そうね~。陽彩ちゃん。可愛い~」

「もう、二人ともからかうのはやめて!」


 陽彩は顔を真っ赤にして、照れていた。


「あんなに陽彩が照れるなんて」

「ね~。あんなひーちゃん。初めて見た」

 

 そんな陽彩のことを見て、雛形と有川は驚いていた。

 

「さ、陽彩をからかうのはこの辺にしといて、翼君が作ってくれたクレープを食べますか」

「そうだよ。私をからかうんじゃなくて、クレープを食べてよね」

「私も食べよーっと」


 彩と桃がそれぞれ、好きなクレープを手に取って食べ始めた。


「愛理と七海も食べて」

「うん!」

「分かったわ」


 雛形と有川もそれぞれクレープを手に取って食べ始めた。


「「「「美味しい~」」」」


 クレープを食べた四人が幸せそうな顔でクレープを食べていた。

 やっぱりいいな。幸せそうな顔で食べる人を見るのは。


「はい。翼の分」

「ありがと」

「私も食べよーっと」


 陽彩がそう言って、クレープにかぶりつく。


「ん~。美味しい」

  

 でも、やっぱり陽彩の幸せそうに食べる顔が一番いいな。

 そんなことを思いながら、俺もクレープにかぶりついた。



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