夜十時に私は『トルココーヒー』を作った

隅田 天美

料理の素人(一般人)が読者から紹介された料理を再現してみた実話 その2

「だからさ、政府はダメなんだよ」

 私はかれこれ五分ほど、カウンターに座った見知らぬオジサンから「いかに個人事業主がコロナ対策で大変か」を聞かされていた。

 彼が先客なので文句を言えた義理ではないが、『ああ、飲み屋で酒乱な上司との飲み会ってこんなに苦痛なんだ』と勤め人である私は内心思っていた。

 死んだ目の私をマスターが助けてくれた。

「今日はどれを飲みますか?」

 私は言った。

「今日はコーヒー豆を買いに来ました」

「おや、珍しい」

「何か、お薦めありますか?」

 マスターは反問した。

「ホットですか? アイスですか?」

「アイスコーヒー、水出しコーヒーを家で作りたいので……」

 自然ナチュラルに嘘を付く自分が少し嫌。

 それを出さない。

 大人だから、出さない。

「ああ……でしたら、これは如何でしょう?」

 マスターが指したのは『ペルー・エルパルゴ』。

「苦みが少なくって深みがあります」

 この言葉で私は内心ガッツポーズを取った。

「試しに飲んでみます?」

「ぜひ」

 出てきたアイスコーヒーは確かに深く、苦みが少ない。

――これなら、出来る!

「水出しコーヒーなら細かいほうがいいですね。こちらで挽いておきますね」

「ありがとうございます」

 隣の先客は温くなったコーヒーを啜りながら「でも、やっぱり政府とか自治体が……」と愚痴っていた。


 帰宅して儀式をして、紙袋から挽かれたコーヒー豆を出す。

 現在、連載中の「ようこそ、異世界へ」の五話でよく書き込みをしてくれる、外訪楠様が

『もし濃い目で行けるなら、自分が最近知ったトルココーヒーはいかが?


コーヒー豆を炒って摺ってカップに直接入れ、お湯を差す……勿論砂糖もミルクもお好みで。

まだ試してないのですが、実に濃く味わえる上に、其処に残ったカスで占いが出来るとか。


 しかし今の自分はチャイにハマってます( ´艸`)』

という書き込みをもらった。


 調べてみるとトルココーヒーは熱い砂で専門の道具を使って熱して飲むらしい。

 でも、そんな準備は不可能なのでコーヒーの粉(豆から挽いたもの)をカップに直に淹れて飲む。

 え?

『炒らないのか』?

『すり鉢あるなら擦れよ』?

 言っておく。

 実は、以前、無職時代(精神病院に通院していたとき)にコーヒーに少しハマったことがある。

 で、だ。

 コーヒーの生豆を炒ると大量のチャフ、具体的には外皮が弾けて飛び散る。

 そもそも、炒る機器自体が中々ない。(自作しようと思えばできるけど、台所を汚したくない)

 すり鉢も溝に豆のカスが入ると取るのが面倒。


 結婚した友人が新婚旅行先のハワイから送ってくれたコッテコテの『THEハワイのお土産』マグカップにコーヒーの粉(豆から挽いたもの)を直に入れて砂糖を足す。

 そこに沸騰したお湯を注ぐ。

 猫舌なので少し冷まして飲む。


 まず、味云々の前に大量のカスが邪魔。

 口の中がじゃりじゃりする。

 それを息で追いやりながら飲む。

 味は喫茶店で飲んだ味に甘みが加わった。(今回はホットだけど)

 でも、じゃりじゃりする。


 今、横に飲み干したマグカップがあるのだが内側は豆のカスでできた縞模様が出来ている。

 底には大量のカスが沈殿している。

 

 少し変わったコーヒーを飲みたい方、お試しを。


追伸・外訪楠様、こんなんどうでしょう?

   あと、チャイ、美味しいですか?

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夜十時に私は『トルココーヒー』を作った 隅田 天美 @sumida-amami

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