0に近い0ではない夜明け

綿麻きぬ

僕は光を探す

 日が昇る前、僕は考える。どうせまた朝がくる。どうせいつもと変わらない毎日を送る。生き急ぎながら後悔する毎日が繰り返されていく。


 そんな朝がくるのは夜があるからだろう。夜は光がないから、影も出来ない。全てが平等に闇の中に溶けていく。いつまでもその闇の中で溺れていたい。


 だけど明けない夜はない。


 地球は回って、太陽は昇って、時間は過ぎていく。当たり前だ。当たり前だけど、それがきつい。当たり前がきつい僕はもうきっと朝が来るたびに塵になっていく。


 だけどもしも夜のうちに隕石が落ちてきたら? 地球が爆発したら? そんな妄想をする。


 その妄想では夜は明けない。永遠に明けない夜が続く。それは0に近い。でも0ではない確率だ。


 だけど僕自身を見てみると僕に夜明けはあるのだろうか、疑問に思う。永遠に夜のままで、永遠に闇の中で自分が見えない。自分の影をいくら探しても、そんなものは見つからない。なぜなら光がないのだから。だからだろう、同族のよしみで夜に溺れていたいのだろう。


 闇の中にいると光を求めてしまう。自分を見つけるために。無機質でただ影を強調するような光では駄目なのだ。太陽みたいに暖かく、包み込んでくれるような光を僕は求めている。


 僕はそんな光を探して、夜明けを求めている。0に近いけど0ではない夜明けを。

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0に近い0ではない夜明け 綿麻きぬ @wataasa_kinu

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