対リア充殲滅兵器SASAKI

百葉箱

第1話 モテたい

 それは全世界の男の夢である。ロマンである。だからこそ持つものに嫉妬の炎を燃やす。ここにその炎を燃やしまくった結果リア充を燃やすという結論に至ったものがいた。名を佐々木太一ささきたいち。高校2年の青春真っただ中である。


「はぁー。モテてーなー。」


「朝からお前のモテない論は聞きたくねーよ。」


 今、佐々木に返事をした男。こいつは佐々木の腐れ縁で親友で敵の宮間奏多みやまかなただ。バスケ部に所属しており、いかにもチャラ男を具現化したような男だ。

 しかし性格は意外にも頼りになる優しい男だ。だからなおさら恨めなくて太一はいつも劣等感を味わっている。皆も気づいたと思うがこの男、彼女持ちだ。


「おまえはいいよな。かわいい彼女さんがいてよ。」


「お前だってスペック高いんだからモテんだろ。」


「ああ。がんばったさ。頑張ってもこのざまだ。笑えよ、勝ち組。」


「じゃあ遠慮なく。あははははははは。マジ面白れー。こんなにモテないことで悩んでいる奴初めて見たわ。」


 そうこの男、佐々木はスペックは高いのである。それには秘密があった。彼は小学生の頃からモテることへの執着が人一倍強く、あらゆることを極めてきた。小学生の頃は足を速くし、中学ではスポーツ全般、高校になり勉強を極めたことにより超人が誕生した。顔もそこまで悪くなく10人に聞いたら3人はかっこいいというぐらいだ。しかしなぜかモテない。


「おっはよー。盛り上がってるねー。」


 この女、佐々木と宮間の幼馴染で腐れ縁だ。名を小向皐月こむかいさつきという。彼女は常時黒髪ポニーテールが特徴の体育会系女子高生である。彼女にはとある称号がある。それは学校1の美少女というものだ。それゆえに絶え間なく告白され多く男が玉砕していく。悲しきかな、なぜか付き合わない。そのことを昔聞いてみたことがある。これはその時の会話である。


 夕暮れに染まる住宅街、奏多が彼女とどこかへ消えたので、皐月と二人で帰っていた時のことだ。


「皐月、俺モテたいんだけどどうしたらいい?」


「太一はそのままでいいよ。モテない方がいいし。」


「なんだよ、それ。喧嘩売ってんのか。」


「さあどうかな~。」


 彼女は少し顔を赤く染めながら言う。しかし佐々木は気づかない。彼は気づいたとしても夕暮れのせいだと勘違いするだろう。それほどまでに彼のモテないという思い込みは激しかった。


「それでさ皐月、お前なんで付き合わんの?」


「それは…だって好きな人いるもん…」


 消え入りそうな声で彼女は言う。


「えっ、好きな人いるのか。誰だ誰だ、教えてくれ。」


「このデリカシーなし。もう知らないっ。」


「さつきぃぃぃぃぃー。待ってくれよ。」



 お気づきになられただろうか。彼は鈍感クソ野郎である。彼のモテない理由とは単純明快。皐月が可愛すぎて佐々木と付き合うことが不可能だと皆知っているからである。ここから始まるのはリア充を殲滅する彼と彼を追う可愛い彼女の恋の物語だ。








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