四角な三角
とまと
第1話
頬を掠めるような、誰かに撫でられたような気配を感じたのはつい先程の事。
日々のルーティンで通るこの道は周りが石垣で固められていて、何故か好奇心をそそられ通っている。
あと、なんか異世界への裏街道っぽくて好きなのだ。
実際に中学に上がる前までは、友達と異世界転生ごっこをして遊んでいた。
例えば、この空き地の土管を潜ったら異世界への出入り口とか遊んだなぁ。
「試しに潜ってみようかな、まあそういう奇跡起きないだろうけど」
【ピンポンパンポーン】
《おめでとうございます、異世界へようこそ!
記念すべき100人目の異世界者ですね!!!》
土管の中をその声が響いた。やたらと幼いその声が
そういう事ないと思っていたので、仰天して勢いよく立ち上がってたんこぶを作るし、散々である。
やはり先ほど聞いた声は仕事の疲労から来る幻聴なのか、なんなのかわからないのでもう一度潜ることにした。
潜って何も聞こえなければ先程のことは幻であると決めつけることができるからだ。
結論から言うと、幻聴でもなかった。
《さっきはよくも逃げましたね、異世界者さん》
先程聞こえた愛らしい声の筈だがドスが効いてる分苛立ちを覚えているようだ。
「異世界者って言うけどそっちの方が異世界者じゃないの?」
《でも私たちの世界に他の世界の方がいらっしゃるのだから貴方が異世界者さんになりますよ?》
「外国人の定義と一緒ってことか、理解したかも」
《理解してくれた事には感謝ですわ、それよりも異世界者さん、他の世界に通じる道をお開きになるってことは何か偉業を成し遂げたとかなんですよね?》
わくわく、どきどきといった気持ちのこもった目線を貰うが、はてさて偉業とか私とったことあったっけ?
言い淀んでいると向こうから声をかけてきた
《ないんですかぁ、なんかぁ!》
「ないと思う、今日も怒涛の30連勤が終わって3日有給もらって休みだーって感じで帰ってきた途中だし」
《え、異世界者って、そんな労働してるの?》
「いや、本当は社員何人か居たんだけど、ここ数日みーんな仕事してる最中に跡形もなく居なくなって、その人達の仕事をもらってやってたら30連勤しちゃったっていう」
《わぉ》
「わぉ、じゃないですよ。お陰で体はクタクタですし、ほんと不思議なんですよね、営業に出ていた4人が揃いも揃って行方不明になってるんですから、その人達の家族も行方がわからないし、死んでいるわけでもないしほんと神隠し的な‥あれ?」
《はい?》
「私で100人目なんですよね?私が来る前同時に4人できたスーツ姿の男性3名、女性1名とか見てません??田中、佐藤、鈴木、上原って言うんですけど知りませんか?」
《うーん、わからないんですよねぇ、確かに100人目と言ってるけど99人目の時人事異動があって部署が一気に増えて変わったので》
「そっか、そっちの世界も部署替えとかあるんだ」
《まあ、貴方も対象者ですし、どうします?異世界来ちゃいます?》
「いえ、休んだら溜めていた積ゲーやろうと思っていたので遠慮します、誘っていただいてありがとうございました、機会がありましたらよろしくお願いします」
そういって私は自ら土管の中から外に出た。
衣服についていた土埃を払って、帰路に帰る事にした。
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