GIDO ―WE ARE SELECTOR―
品格3
第1話 WAKE UP!!
埃に塗れた、かすかに鼻をつく、湿った空気で目を覚ました。
あなたは、ゆっくりと身を起こした。
頭がふらつく。吐き気を覚えるほど、天と地が狂いそうなほどの酩酊感があなたを襲う。
うまく力の入らない体を何とか動かして、あなたは立ち上がった。
見下ろせば、思いの外に近い地面。小さな手。細く生白い足と腕。
あなたは、それらにささやかな違和感を抱きながらも、何が違和感の原因なのか答えを出せなかった。
考えていても仕方がない。あなたは、酔いで覚束ない足取りながら歩き出した。
辺りは薄暗く古ぼけた街路で、それを覆うように不細工に入り組んだ建物が建ち並ぶ。
往来にはやせ細り力をなくした人が点々と無気力に座る。
貧民街(スラム)。そういう言葉が、あなたの脳裏を掠めた。
あなたは、大して彼らに興味を向けることもなく、歩を進める。
見知らぬ街を彷徨い続け、あなたが足を止めたのはなんの変哲もない雑貨屋であった。
雑然とした品並びのその店先、あなたは一枚のくたびれたマントから目を離せなくなっていた。
「おや、ようやく来たのかい」
気さくそうな女主人が、奥から姿を現すなり、意味をはかりかねる言葉を投げてきた。
だがあなたの興味は目の前のマントに釘付けであり、吹けば消えてしまう言葉など右から左である。
「大層気に入ったようだな」
あなたは、コクコクと首を縦に振った。
「そうだろうそうだろう。自慢の一品だ。そんじょそこらのマントとは出来が違うマントだよ、このマントは」
自慢げに語る店主を小脇に、あなたは物欲しげにマントを見つめ続ける。
「ふうむ、でもその身なりじゃ、お前、そのマントには見合わないねえ」
心無い、刃のように鋭い言葉があなたを襲う!
自分を見下ろせば、あるのは服とも言い難いボロ切れを纏った貧相な体。
しゅん、と肩を落として落ち込むあなた。
「おや、そう落ち込むものじゃないよ。ちゃんと身なりを整えてごらんな」
店主は、どこからともなく持ってきた【子ども用の服】と【なめし革の小さな靴】をあなたに渡す。
しかも、女の子用である!
そうだと頷けるような、違う冗談ではないと言うような。
矛盾したすわりの悪い気持ちを抱きながら、あなたはやはり自分を見下ろす。
そこにあるのは、――確かに完全無欠、見間違いようのないくらいには、貧相な少女の身体だった。
スカッ。スカッ。
何が、とは言わないが、下の方に手をかざしても、虚しく空を切るだけであった。
あなたは渡された衣服に着替えた。
あつらえたかのようにぴったりと身体にあう……。
不気味なものを感じるが、裸一貫のあなたに、この施しを受け取らないという選択肢はなかった。
「うん、馬子にも衣裳ってとこかね。これで……」
店主は一度頷いてから、そっとあなたにマントを羽織らせた。
飾り気のない灰色のマントには、埃っぽさと不思議と落ち着く煙臭さがあり、あなたはギュッとマントをかき抱き、顔をうずめる。
「……大事にしてくれそうだね。……ソイツをよろしく頼んだよ、あんた」
そんな声が店主の方から聞こえた気がしたと思って、あなたは顔を上げた。
……そこには何もなかった。店は影も形もなくなり、あばら家の裏壁がのっぺりと並ぶだけである。
あなたは狐につままれたような気分に陥りながらも、残された衣服とマントが夢の産物でないかをしっかり確かめる。
ぐにぐにとマントを掴むあなた。念入りに丈夫さも確かめるように、力いっぱい引っ張ってみる。
「い、痛い痛い痛ァーーーーーーーーーーーーーい!!!!」
意識が飛びかねない爆音が、あなたの耳の隣あたりで鳴り響いた。
あなたは目を白黒させて、耳鳴りに耐えながら辺りをうかがった。
「どこ見とる! こっちだこっち!」
声を追うように、あなたはマントに恐る恐る視線を向けた。
「この俺によくも堂々とこんな無礼を! 俺様を誰だと思っている!! 耳かっぽじってよく聞けよぉ~、俺様の名はギド!! 何を隠そう……隠そう……?」
マントは威勢よくがなりたてたかと思えば、何か自分の状況に戸惑ったようにもごもごとしはじめた。
そして自分が何者かを悟ったかのように、落ち着いた声音で言い放った。
「………………――――――マントだ!!」
これは『あなた』とお喋りをする不思議なマント・ギドの物語。
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昔むかしに考えていざ書こうとしてみたら三人称も一人称もしっくりこなくて腐らせていたのを
二人称という発想を某ゲームから得てリハビリがてら書くことにしました。
ストーリー中、タイミングタイミングで選択肢が登場する予定です。
twitterによる投票機能を利用した、投票数による選択決定を行う予定になっています。
木っ端も木っ端な作品のため、投票が0の場合もあると思いますが
その場合は、それっぽい選択肢を作者が勝手に選ぶ感じになります。
対戦よろしくお願いします。
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