28 射的②

 微笑ましいお願いだ。すぐにやめさせるものでもないと見守ることにした義一と友仁の間を掻き分けて、威勢のいい少女が「あっちゃん!」と叫んだ。凰和におねだりする女の子とそろいの水色ワンピースを着ている。きっと姉妹だろう。友仁より少し幼く見える姉は妹を捕まえようとしたが、妹は嫌がって凰和の後ろに隠れた。


「もうあきらめるって言ったでしょ!」

「だってほしいんだもん! キラキラの入ってるやつ!」


 どうやら妹の狙いはおもちゃつきのお菓子のようだ。義一が的の並ぶ棚に目をやると、確かにシールやおもちゃのアクセサリーが入ったお菓子がいくつか見えた。


「おねーちゃんはへたくそだけど、おーわさまのまほうならぜったい取れるもん」


 妹がしがみつく足の持ち主に気づくと姉は驚いた顔をした。ことさら姉は躍起になって再び妹に掴みかかる。さっきよりも強く、素早くなった腕に妹はとうとうご用となり凰和から無理やり引き剥がされた。すると妹は大声で泣き喚く攻めに出た。

 こうなると義一と友仁も見物しているわけにはいかない。姉妹はふたりで来たのか親が近くにいる様子もなく、義一と友仁は困り顔の凰和に歩み寄った。


「キラキラが入ったお菓子というのは高いんでしょうか?」


 首をかしげる凰和に笑って、義一は台に並んだ一丁のコルク銃を手に取った。


「ここのお菓子やおもちゃはこの銃で当てて倒さないと手に入らないんだ。そういう遊びだな」

「なるほど。二〇〇円で十発ですか」


 射的の値段と所持金はぴったりだった。いや、たとえそうでなくとも凰和は義一や友仁から金を借りて姉妹に歩み寄っていたに違いない。義一は自分の封筒も取り出した。


「義一さんと友仁もやってくれるんですか!」

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