14 巫女のお役目①
「ありがとう友仁。とてもいい知らせだね」
凰和の声は明るかったが、口元に浮かべた笑みまではうまくいかなかった。その違和感は友仁の顔から喜色を消し去った。
「凰和様? あまりうれしくないですか……?」
「ごめん。話を理解することに精一杯で、感情が追いつかないんだと思う」
友仁はますますわからないといった風に顔をしかめて無闇にあたりを見回した。
「そうだ。ごはん食べますか。目覚めたばかりの凰和様にはスープがいいだろうって、母ちゃんがいろいろ用意してくれたんです!」
「友仁のご両親は今ここに?」
「あー、出張に行ってます」
義一の耳にも友仁の声は歯切れ悪く聞こえた。凰和が首をかしげて詳しい説明を求めるも、友仁は下手な笑みで誤魔化すばかりだ。
「ありがとう。でもまだお腹すいてないんだ」
両親の詳細を聞き出すことを諦め凰和がやんわり断りを入れると、あたりには微妙な空気が流れた。友仁は子どもらしくふてくされた顔を隠そうとしない。見かねた凰和が「夕食はお願いしようかな」とつけ足しても、うなずいた友仁の仕草はいかにもしぶしぶといった体で機嫌が上向いたわけではなかった。
凰和から助けを求める視線を送られて義一は首を掻く。食事を断られたことが不満なのではない。友仁は凰和の心が理解できない自身の幼さがもどかしいのだろう。
「おーい。そこのあんちゃん。ゆーちゃん知らないか? ここの神社の子なんだが」
突然下から声をかけられた。参道を覗き込むと大工風の作業着を着た男たちが数人、鳥居大門を見上げていた。義一が口を開くよりも早く、友仁が身を乗り出して手を振る。男たちも手を振り返して、そのうちのひとりが「屋台の設置、はじめちまってもいいか?」と声を張った。
「はい! お願いします。俺もそっちに行きます!」
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