第21話 仮称オリハルコンの価値 〇

 第21話 仮称オリハルコンの価値 〇

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 試すといっても、大したことはしない。

 というか、大したことできるほどの力がない。

 ただ、この石が人にとって価値のあるものなのか調べるだけだ。


 仮称オリハルコン、こいつはまだ掘ることはできないが、それでも小さければ周りを掘り抜き集めること自体は出来る。

 頑張って小さな個体を見つけ出し、それをえっちらおっちら地上にまで運んできたのだ。


 もし価値があるのなら、今すぐには使えずとも将来何かに使えるだろう。


 方法は簡単。

 巣穴からこの小石を外に転がして、その後は巣穴に引っ込んで外の様子を探るだけだ。


 この鋭い感覚は便利だ。

 わざわざ外に顔を出して、身を危険にさらさなくても外の様子が何となくわかるのだ。


 というわけで、石を外にポイ


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ……いつまでたっても、何も近づいてくる様子がない。

 巣穴から顔を出すと、少し離れた場所に仮称オリハルコンが転がっている。


 当たり前といえば当たり前だ。

 あんな小石気が付くわけがない。


 モンスターのいる危険地域で、下を見ながら歩く人間がどれだけいるか。

 しかもその人間がたまたまここの近くを通って、この小石を見つけないとこの作戦は成功しない。


 そのうえで、この小石に価値がない可能性もあるのだ。

 無価値だったら、拾う人間なんていないだろう。

 ただ気が付かなかっただけなのか、無視したのかすらわからない。


 ……なんだこのガバガバな作戦は。


 レベリングのし過ぎで、頭がおかしくなったのかもしれない。

 まぁ、久々に穴掘り以外のことに集中して、いい気分転換になったし良しとしよう。


 さて、穴掘り作業に戻りますか。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ー○○ー


「はぁー。お前は、なんでそう問題行動ばかり起こすんだ」


「別にいいじゃない。何かあったわけでもないんだから」


「あのなぁ、確かに被害はなかった。だがお前のその身勝手は、いつか仲間やお前自身を滅ぼすぞ」


「毎回毎回そんなこと言うけど、実際にそんなこと起きたことなんてないじゃない。私、超運いいから大丈夫よ」


「あのなぁ」


「選ばれし、勇者様だからね」


「こんな奴が国を救う英雄ねぇ」


「文句でもあるの? 文句あるなら私じゃなくて、私を選んだ教会にでも行ってらっしゃい。今生の別れになるかもしれないから、今のうちにお別れお言っておくわ」


「まさか。俺だって、命は惜しいさ」


「遊女から勇者になったのなんて、歴代でも私ぐらいじゃないかしら? ね、運のいい女だと思うでしょ」


「まぁな」


「だから、大丈夫よ。そんなに心配なら、一晩どう? 私の運のおこぼれにあずかれるかもよ」


「教会の決まりじゃ、結婚前交渉はダメなんじゃなかったか?」


「あら、そうだったかしら? でも一昨日、教皇様と一緒にいたけど」


「はぁ……世も末だな」


「あら? こんなところに、純魔石が」


「なに!?」


「綺麗、これ何年ものかしら?」


「この場所で見つけるなんて、ほんとに運がいいのな」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あれ? 石がなくなってる」


 レベル上げして戻ってきたら、巣の前に投げておいた石がなくなっていた。


 誰かが拾った……可能性は低いな。


 小さかったし風にでも飛ばされたのか、モンスターにでも蹴飛ばされたか。

 まぁ別に、ないなら内でそれでいい。

 気分転換に外の空気を吸いに来たついでだし。


 もし誰かが持って行った、あの石が価値あるものだったとしても……

 もう掘れるようになったから、どのみち無意味だったしね。


 あんなただの石、普通に掘れるようになったら区別なんてつきっこない。


 ーーーーーーーーーー

 種族 土竜(モグラ)

 総合評価:中動物レベル

 配下:1匹

 exp税:1%

 スキル

 土竜下級 レベル103 exp0

 土竜中級 レベル11 exp20

 土竜上級 レベル2 exp20

 土竜特級 レベル1 exp1020

 女神の加護 ーー

 最高神の興味 ーー

 ーーーーーーーーーー


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーー次話予告ーー


『第22話 探索開始』

 明日更新


 少しでも続きが気になる、面白いと思っていただけましたら『ブックマーク』『評価』よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る