第53話 仇


「ふざけんな。俺の後ろには神崎さんが控えてるんだ! 俺にこんな事をしてただで済むと思ってんのか? やめるなら今だぞ。土下座して誤ったら許してやる。今すぐやめろ!」

「その神崎とやらは強いのか?」

「当たり前だろ! 炎帝だぞ! あの人にかかればお前なんか瞬殺だよ。一瞬で灰だ」

「神崎は炎使いなのか?」

「最強だ! お前なんか相手にもならないぞ!」

「そうか、相手になるかならないかお前の身体で判断してくれ」

 「ヘゥ?」

『火炎剣』

「お、お前いくつスキルを……」  


俺は三宅に向かって火炎剣を振るう。


「グアッ! ヒイィイ〜!」

「どうだ?」

「な、何が……」

「俺の炎はどうだ? 炎帝と比べてどうなんだ?」

「そ、それは……」


三宅が背を向けてその場から逃げようとしたので、俺は更に火炎剣で攻撃する。


「ヒイィイ〜。俺の足が……足が〜!」

「これで逃げる事はもう無理だろう」

「た、助けてくれ! 何でもする。もう彼女達には近づかない約束する!」

「そうか。それは良かった。じゃあ炎帝と比べて俺はどうなんだ」

「お前も結構強いが、炎帝神崎さんはそれ以上だ」

「炎帝はどんなスキルを使うんだ?」

「メインスキルは『灰塵』だ。目に触れたものを一瞬で灰にしてしまうんだ」

目に触れたものを一瞬で灰にする? そんなスキルがあるのか。もし戦うなら目に触れない様に戦うか、効果の範囲外からの遠距離攻撃が必要か。いずれにしても今の俺には難しいな。

「もういいか? 今日の事は神崎さんにも言わない。もうお前とは関わらないから見逃してくれ」

「後、幾つか質問するぞ?」

「ああ、別に構わないよ」

「何であの二人を、彼女達を無理に誘おうとしたんだ?」

「そ、それは、彼女達が可愛いからさ。もうこっちの世界の女には飽きたんだよ。お前も男ならわかるだろ。こっちの女は襲おうが何をしようが勇者の言いなりだろ。正直もう飽きたんだよ。やっぱり同じ世界の女の子が一番だと思わないか? だからだよ」

「……この世界の女を襲ったんだな?」

「おいおい、そんな怖い顔するなよ。お前だってやったことあるだろ? この世界に来た男でやったことない奴なんかいないだろ」


やはりこの勇者達はどうしようもないクズだな。


「そうか……。これで最後だ」

「お、おお、早く頼む」

「岡田義親を知っているそうだな」

「ていうか何で知らないんだよ。普通知ってるだろ〜」

「いや知らないから聞いてるんだ」

「岡田って瞬神のことでしょ」

「瞬神?」

「そう瞬神。それも知らないのかよ。お前本当に勇者か?」

「知らないな」

「十二勇将の一人瞬神岡田義親だよ」

「十二勇将……」

「そう。だから何か恨みがあるのかもしれないけど諦めろ」

「あいつはどこにいるんだ?」

「場所までは知らないよ」

「お前の所の炎帝と瞬神どっちが強いんだ?」

「それは分からないけど瞬神もかなりヤバイって話だけどな」

「そうか、分かった」

「それじゃあ、俺はもう必要ないな。お役御免だろ、じゃあな」

「ああ、お前はもう必要無い」


俺は全身全霊をもって炎の刃を振るい勇者三宅を両断した。


あとがき

次で完結です。

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