第26話 終戦
グレーウルフもじりじりと距離を詰めながらこちらを窺っている。
その時、グレーウルフが咆哮と共に大きく口を開けた。
まさか……
「ガアアアアア〜!」
グレーウルフの口からは炎の塊が吐き出された。
放射線状に広がるファイアブレスとは異なるファイアボールと呼べる大きな火球が俺に向かって飛んできているが、予想外の事に完全に反応が遅れ『アイスジャベリン』の発動も出来ず避ける事も間に合わない。
俺は一直線に向かって来る火球に向かって火炎剣を振るい、斬って落とした。
正直自分でもやった事が無いのでまさか斬れるとは思わなかったが火球は真っ二つに割れて後方へと流れていった。
グレーウルフにとっては必殺の一撃だったのか口を開けた状態で、俺の前に無防備な状態を晒している。
俺は火炎剣をグレーウルフに向けそのまま一気に距離を詰め。火炎剣で串刺しにして焼き尽くす事に成功した。
「思った以上に苦戦したな……」
俺の戦闘は終わったがまた敵は残っているので、朱音と蒼花の方に向くと二人共、満身創痍に近い状態に陥っていた。
アイアンウルフの数はかなり減っているので相当数倒した様だが、それと同時に二人共かなりのダメージを受けている。
致命傷では無い様だが、それぞれがアイアンウルフの爪と牙でかなりの手傷を負い、出血が見られる。
俺は気がつくと二人の下に走りながら『アイスジャベリン』を発動していた。
「ああああああああ〜!」
二人が血を流しボロボロになっている姿を見た瞬間、俺の中の全身の血液が沸き立ち頭が真っ白になってしまい、怒りに感情を支配されてしまった。
火炎剣を振るいながら二人を襲おうとしているアイアンウルフを背後から滅多刺しにする。
「リュカ……セリカ……」
頭の中で目の前の二人の姿と今は亡き二人の姿が重なり、腕の痛みも忘れ、剣を振るい続ける。
「死ねぇええ〜、邪魔だあああああ〜!」
目の前のアイアンウルフは俺にとっての絶対的な敵!
何を置いても殲滅すべき敵!
二人を傷つける奴は許さない!
剣を振るい『アイスジャベリン』を発動しアイアンウルフを狩り尽くすのにそれ程時間は必要としなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
俺達は数分間の攻防で全ての敵を倒す事に成功した。
「リュートさん……」
「助かったのです。疲れました〜」
「あ、あぁ、二人共大丈夫か?」
「大丈夫では無いです。でも回復魔法を使うので大丈夫です」
「私は腕が痛いのです」
「危なかったな」
「それよりもリュートさんの左腕、ひどい火傷じゃ無いですか。先に治療しますね」
「いや、俺は最後でいい。自分達から治せ」
腕の痛みは酷かったが、怒りがその痛みに勝ったのかファイアブレスをくらった直後よりも若干痛みが薄らいでいる気がする。
それにしても危なかった。
勇者を含む三人でこれか……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます