第24話 シルバーウルフ

本来であれば朱音に治療させたいところだが、治療に手を取られれば朱音まで襲われる可能性があるので、蒼花には踏ん張ってもらうしか無い。

「リュートさん! あの奥に大きいのが二体います」

朱音の声に従い目線を向けると、確かに通常のアイアンウルフとは異なる大きさのオオカミが二匹確認出来る。

あれがこの群のボスか。

だが二匹は体色が違い、一匹は黒では無く銀色の体毛をしている。

もしかしてあれはシルバーウルフか。

アイアンウルフのステータス値の平均はおそらく百前後だがシルバーウルフはその上位種なので三百に届くかもしれない。

それでも単体であれば十分に対応できる数値だが、アイアンウルフの群れがいる上にもう一匹の個体もグレーがかった色をしているので、可能性としては、アイアンウルフとシルバーウルフのハイブリッド。

もしかしたら子供なのかもしれないがほぼ同等の大きさがあるので、ステータス値も並ぶものがあるかもしれない。

単純計算は出来ないが三百が二匹集まれば六百となり、俺たちのステータスを超える可能性がある。


「蒼花、朱音、俺があの二匹の相手をする。それまで踏ん張れるか?」

「リュートさん、誰に言ってるんですか? 私はいい勇者なのですよ。余裕に決まってるじゃ無いですか。楽勝なのです」

「私も慣れてきたので問題ないですよ。パパッと片付けて下さい」


こいつら完全に痩せ我慢だな。戦闘経験の浅いこいつらにはかなりきついはずだが、三人に余力があるうちにボスを叩いた方がいい。

俺は『アイスジャベリン』を放ち、前方へと無理やり進んでいくが後方から炎の弾が飛んで来て眼前のアイアンウルフに命中した。

朱音が無理を押して援護してくれたようだ。

俺が更に進むと奥の二匹も俺を敵として認識したようで、唸り声を上げて身構える。

大きな体躯と威圧感がいままでのアイアイウルフとは桁違いだ。

グレー色の個体に向けて『アイスジャベリン』を放つが、直前で大きく跳ねて避けられてしまった。

流石はボスらしき個体だけあって反応もはやい。

もっと近距離から叩き込む必要がありそうだ。


「こっちへこい! この犬野郎! ほら向かって来てみろ、腰抜けが!」


正直言葉を理解するかは分からなかったが、挑発しているニュアンスが伝わればラッキーだろうと思い、必要以上に煽ってみるが、二体は毛を逆立てて反応を見せる。


「ほら、来い! さっさと来い! ほらワンワン、ワン!」


俺の挑発が聞いたのかグレーの個体が唸り声を上げて弾丸のように飛びかかって来たが『アイスジャベリン』を放って迎え撃つ。

グレーウルフは器用に空中で身体を捻って氷の槍を躱して俺の頭を食いちぎろうと大口を開けて襲って来る。

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