第19話 勇者 間宮蒼花

ステータスを確認すると魔力が2上がっていたので、やはりそれなりのモンスターだったようだ。

という事は魔石もそれなりのはずだが、デカすぎるし硬すぎて取り出せる気がしない。

朱音もお手上げのようだし仕方が無い。


『火炎剣』


俺は炎の剣を発現させてグランドタートルを解体し始めた。

炎の刃はグランドタートルの甲羅をも炭化させながら切断する事が可能で、二十分ほどかけて、ようやく魔石を取り出す事に成功した。


「リュートさん、やっぱりS級……」

「何を訳のわからない事を言っているんだ。この魔石の売却益を半分ずつでいいか?」

「私にもくれるんですか?」

「それは二人で倒したんだから当たり前だろ」

「やっぱりリュートさんはいい人ですね」

「そんな事はどうでもいいが、お前、前より強くなったな」

「そうですか? 毎日モンスター退治を頑張ってますからね。ようやくこの世界にも少しだけ慣れてきましたし」

「そうか、まあがんばれよ」

「はい」


朱音の魔法に相性はあるだろうが、モンスター相手であれば十二分に戦えているようなので、心配はなさそうだ。

まあ俺にはこいつが死んでも別に関係ない事だが。

グランドタートルを倒してから二ヶ月間は再び毎日のようにモンスター狩りを続けて俺のステータスも少し上がった。

そろそろ勇者を狩るタイミングかもしれない。


「リュートさ〜ん、一緒に行きますよ」

「おい、勝手に何を言ってるんだ? それにそいつは誰だ?」

「リュートさん怖いですって。こちらは 間宮蒼花ちゃんです。新米勇者です」


こいつも勇者が……

俺の中から一瞬殺気が漏れ出すが、朱音の前なので何とか抑え込む。


「間宮蒼花です。よろしくお願いします」

「…………」

「リュートさん、無視しないでください」

「……リュートだ」

「はい、よろしくお願いします」

「この子も最近こっちにきたんですけど、他の勇者と馴染めなくて、私と一緒にいる事になったんです」

「馴染めない?」

「そうですよ。基本勇者って男の人が多い上に、この世界に来てる人は、勘違いしている人が多いので、女性には難しいんですよ」

「そうなのです。他の勇者の人は怖いです。朱音さんだけは優しくしてくれて。それで朱音さんがリュートさんに紹介してくれるって」

「おい、お前、俺が勇者を嫌いなのはわかってるんだよな」

「蒼花はいい子なので大丈夫ですよ」

「そう言う事じゃないんだ」


なぜか朱音の俺への対応がおかしくなってきている気がする。


「リュートさん。大丈夫なのです。私も勇者の事が嫌いなので」


何を言ってるんだこいつは。自分と朱音も勇者なのを忘れているのか?


「お前も勇者だろ」

「私はいい勇者なのです」

「ふ〜っ……朱音それじゃあな」

「リュートさん待ってください。一緒に行きますよ」

「どこにだよ」

「もちろんモンスター狩りです。蒼花は剣を使うので私では教えられないんです」

「剣? こいつが?」

「はい。私のスキルは『風切』という剣に風を纏わせて戦うものなのですが、私は剣など触った事も無いので、リュートさんに教えてもらいたいんです」


まあ、こいつを殺す時に能力を知っておくのも悪くは無いか……


「わかったよ。それじゃあさっさと行くか」

「はい」

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