第4話 ブレイブスレイヤー

まず剣を握る腕の太さが今までと違う。

明らかに筋肉量が増えている。今までどちらかというと細身だった俺の腕がかなり逞しく変化しており、どうやらそれは腕だけでなく、全身に及んでいるようだ。

そして何故か身長も高くなっているようで、今までぴったりだった服が少し小さくなっている。

そしてさっきまで折れて激痛を発していたはずの肋骨が痛くない。


「何が起こったんだ?」


俺は慌てて秋葉を確認するが、既に事切れていた。

恐らく勇者である秋葉には俺の振るった剣では勇者の高い耐性から傷一つつける事は叶わなかっただろうが、こいつは自分から俺の剣に刺さりに来た。

酩酊状態でバランスを崩し、自分の力で剣に向かって来た。

勇者の突出した攻撃力をもって剣に向かった結果、その突出した耐性を凌駕して致命傷を受けるに至ったという事なのだろう。

完全なまぐれ。秋葉の酩酊状態とおごりと油断が招いた万に一つも無い偶然の勝利。


「やった……」


この日俺は遂に勇者の一人を倒す事に成功した


「ははっ。遂にやった。俺が勇者を倒した……」


自分でも自分の言葉に違和感を感じる。

俺が倒した訳ではなく、秋葉が勝手に俺の剣へ突っ込んだだけなので果たして倒したと言えるかどうかは微妙だが、とにかく排除する事には成功した。

落ち着きを取り戻して秋葉に刺さった剣を抜くが、俺の剣は既にボロボロだった。

秋葉の一撃を受けとめ、秋葉の身体を貫いた剣は、剣先が潰れ刃の部分が大きく欠損していた。


「これはもう使い物にならないな」


足がつく可能性もあるが今は他に手がないので秋葉の持っていた剣を手に取る。

流石は勇者が使用していただけあって俺の使用していた剣とは光沢が違う。

特殊な力があるかまでは分からないが、一見して業物と分かる。

これからの為にも必要だと思い、秋葉の装備と持ち物を一式拝借する事にした。

普段であればこんな事をする事は無いが、この外道勇者を相手には一切良心が痛む事はなかった。

そして俺は自分のステータスを見てみる。


「あ……」



リュート グルー18歳 男 


筋力:35→351

体力:46→384

耐性:30→299

敏捷:35→367

魔力:10→188

魔耐:10→150

スキル ブレイブスレイヤー 火炎剣


俺のステータスが限界値を超え有り得ない数値へと変化していた。

一般人の限界値を大きく超え、勇者には劣るだろうが、勇者の初期数値に迫る数値に跳ね上がっている。

秋葉を倒したからか? 雲の上の存在である秋葉を倒す事で限界値を超えたのか、それとも勇者を倒せばステータスを吸収できるのか?

何しろ勇者を人間が討ったと言う話しを聞いた事がないので、確かめようが無いが間違いなく俺は強くなっている。

そして今まで持っていなかったスキルが二つも発現している。


ブレイブスレイヤー…………戦闘時勇者に対して全ステータス50パーセントの上昇補正がかかる。

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