第33話 ギーメイという男②
ギーメイはマジックエコールの創立者にして初代理事長でもある元ギャンブラーの現スパイである。
あの事故の後孤児院に送られたが、そこでも『あの事故で生きているなんて幸運』だなんだとギーメイにとって不快でしかない事を言われ続け、一週間と経たずに孤児院を抜け出した。
そこからは独りで生き続け、十代になる頃にはひたすらスリルを求めてカジノに入り浸るようになっていた。
自分が『幸運』でない事を証明しようと危険な賭けばかり行なっていくが、全てに勝ってしまいとうとう『幸運の女神に愛されている男』として有名になってしまう。
それでもギーメイは賭けをやめる事をせず、その内常にスリルを感じていないと落ち着かない体質になっていった。
更に時は経ち、カジノでも安定して稼げるようになっていたギーメイは更なるスリルを求めて貴族に喧嘩を売る為だけにマジックエコールを創立。
当初は生徒、特に貴族が集まらなかったので妾の子や末子などの扱いが酷く、いない者として扱われている子を見つけては言葉巧みに学園へ来るよう誘導した。
その後は目的通り貴族から送られてくる脅迫状や暗殺者などを楽しんでいたが、その内卒業生の出世率の高さ、学園を去った者はもれなく落ちぶれていった為徐々に評価は上がっていき、いつの間にか名門にまで成り上がっていた。
再び安定した日々になってしまいつまらなくなっていた時、当時の国王から(息子の教育係として)王宮で働かないかと声をかけられスパイに転職。しばらくは理事長とスパイの二足草鞋だったが、一歩間違えれば即全てを失うというスリルにどっぷりハマり理事長を辞めてスパイに専念する事を決意。
次の理事長を誰にしようか考え、せっかくだからと理事長からは正反対に近い位置にある当時体育教師だったウィリアムに目をつけた。
一応話をするも即答で断られ、逆に気に入ったので当時のスパイ技術(指紋採取、筆跡模写、印鑑偽造)を駆使してウィリアムを強制的に理事長に就任させた。これが原因でウィリアムから本気の殺意を向けられるもギーメイはスリルが増えたとむしろ喜んでいる。
この騒動は水面下の争いだった為大きさの割に知っている人は少ない。
理事長就任を妨害したジルベールとウィリアムは険悪の仲と勘違いする者が多いのはこれが原因。実際に険悪なのはウィリアムとギーメイ(ただしこれはウィリアムが一方的に嫌っているどころか殺意を抱いているだけで、ギーメイの方は歪んではいるが好意的)であり、むしろジルベールとウィリアムの仲は良好。
現在ギーメイは他国で仕事中はスリル満載のスパイを楽しみ、自国で休暇中は殺意満載のウィリアムにいつ見つかり襲撃をかけてくるかというスリルを味わい、人生を満喫している。
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