第19話 悪役令嬢は悪役令嬢でなくなりました。
「で? 公開プロポーズの結果は婚約者じゃなく恋人でもなく、恋人前提の友達から? 付き合っちまえよ、そこまできたら」
呆れたようなエイロン様の言葉がビシバシ突き刺さる。
あの後ビオロ様の言う通りシュエット様の事も含めて全部正直に話したらアズマはそれでもいいと、忘れられない人がいてもいいから側にいたいと言ってくれた。
でも私はアズマの事だけをちゃんと考えたかったから、その人の事を忘れてから、忘れるようにするからそれまで待ってもらっている形での恋人前提の友達。
だからそんな目で見ないでほしい。
ビオロ様とコルセイユさん、フィンク様は普通に喜んでくれているだけにより一層強く感じる。
「うっ、でももっとちゃんとお互いの事を知ってからでも遅くありませんし、私は今まで我儘に自分の思うままに動いてましたからそれはアズマにとって良くない事ですからっ」
エイロン様とフィンク様にまで私の失恋話を聞かせるわけにもいかないからちょっと誤魔化したとはいえ、これもまごう事なき私の本心。自分で言っててちょっと情けなくなるけど一方的に相手の我儘を聞くだけの関係なんて対等じゃない。
「自覚あったのかお前……」
「俺は今のままのエグレット様で十分なんですが……」
「私がっ、納得出来ないんです。私だけが幸せなんてダメです、私だってアズマを幸せにしたいんですから! ああ、もう! 話は以上です! 行きましょうアズマ!」
何か話せば話すほど顔が熱くなってきて告白以上の事を言っているような気がしてこれ以上この場にいられなくて逃げるようにアズマを連れてこの場を去った。
ああ、言ったそばから自分勝手な行動でアズマ振り回して……前途多難だなぁ。
******
エグレットのアズマへの盛大な告白にエイロンはポカンと口を開けた。
「……あれもうプロポーズだろ。さっさと婚約しろよ」
「本人達は至って真面目なんですからいいじゃないですか。しかし僕も話す事があったのですが……まあ彼女達には後で報告しましょうか」
「何かあったのか?」
エイロンがそう聞くと、ビオロは一度コホンと咳を払うとコルセイユの手を取り軽く上げた。
「僕とコルセイユも交際を始めました。といっても正しくは僕達もエグレットと同じく恋人を前提としたお友達、ですが」
「はっ? いつの間に……!?」
「気がついたら、でしょうか。まあエグレットやアズマのように惚気るつもりはありませんが、一緒に行動をしているうちに気があって……といったところですね」
ビオロはいつものように平然と話しているみたいだが、コルセイユの手を掴んでいない反対側の手はギュッと握りしめられている。
コルセイユのように分かりやすく顔を赤くはしていないが、恥ずかしいのか緊張しているのは確かなようだ。
「凄いね! エグレットとアズマに、今度はビオロとコルセイユ! 幸せが沢山あって僕も幸せ! おめでとう!」
「あ、ありがとうございますフィンク様」
「といっても僕達学生の本分は学業ですし、僕の両親に挨拶などはこの学園を卒業してからですね。これからも、その先までよろしくお願いします」
「はい! わ、私の方こそよろしくお願いします!」
惚気るつもりはないと言ったそばから目の前でいちゃつき始められ、エイロンは再び深いため息をついた。
めでたい事ではあるがもう少し離れたところか、自分達のいないところでやってほしい。
「……周りはどんどん変わっていくのに俺だけ何も変わんないってのも寂しいもんがあるな……置いていかれた気分だ……」
「大丈夫! 僕も皆も、エイロンが大好きだから! 置いて行ったり一人になんかしないよ! だから寂しくない!」
「ああ……そうだな、ありがとうフィンク」
「うん!」
******
「ちなみにエグレットの何処に惚れたんだ?」
ふと気になったのか、エイロンがアズマにそんな事を訊ねてきた。
「沢山ありますが一番はその……俺の為に慣れないながらも一生懸命料理を作ってくれたところ、でしょうか」
「料理? でもお前料理得意だろ」
「はい、作るのは勿論好きですし美味しいと言って食べてもらえるのは嬉しいんですが……たまには相手の料理を食べたい時もあるんです。でも俺の方が料理が上手いから、料理人に素人料理を食べさせられないと断られてばかりだったんで……唯一エグレット様だけは俺に料理を作ってくれて……今でもあのオムライスの味を覚えています」
「へー、聞かなきゃよかった。ご馳走さん」
「?」
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