第17話 悪役令嬢は告○されました。
あれからアズマは反省したみたいだし、エイロンからの報復もなし。更にテストも魔法実技が上手くいって今回はなんと十位! 掲示板にも私の名前が張り出されて、頑張った証みたいで誇らしい。
本当は自慢したい。でもアズマ達全員は今回も十位以上で私より上だから自慢出来ないのがちょっと残念。
魔法実技はまだちょっと不安定で心配だったんだけど暴発しなかったし、筆記も前回と同じで問題なくこなせて満点だったし順調順調。
今の私はもう何も怖くない、そんな気分。
今日は何か甘い物が食べたいなと思っているとクラスの一人の女性に声をかけられた。
「エグレット・ミュレー、これ以上貴女のイジメを放っておくわけにはいきません!」
?
確かに我儘放題やりたい放題しているけれど、コルセイユさんは勿論誰もいじめていないのに? ていうかこの金髪誰。身なりからして貴族っぽいけど覚えがない。
「しらばっくれても無駄よ! ちゃんと証拠はあるんですからね! 貴女がアズマさんをいじめている証拠が!」
「え、俺ですか?」
アズマと私だけでなくビオロ様とエイロン様、コルセイユさんはポカンとしているけどそれ以外の人達の視線が凄い突き刺さってきてる。
テスト結果発表日の掲示板前だからそれはもうすごい目立っている。
「わ、私はアズマを苛めてなんていません!」
「ふん、ちゃんと調べているんですからね! 貴女は普段からアズマさんをこき使っているじゃない、自分で借りた本をアズマさんに押しつけて返させていたでしょう!」
「それエグレットの奴命令せずちゃんとアズマに頼んでいたぞ?」
自信満々な金髪に私が何か言う前にエイロン様が庇ってくれた。アズマも周りの視線から遮るようにしてくれている。
「俺もその日の事はしっかり覚えています。丁度図書室に用があったのでついでだからと受けましたし、エグレット様に本の返却を頼まれたのはその一度だけです」
「で、でも命令していたじゃない! 早く行けと!」
「それは俺がエグレット様に失礼な事を言ってしまったので怒られただけです」
アズマ本人から否定されて金髪令嬢は一瞬たじろいで、そのまますぐにこっちを睨んできた。
ああ、そういう顔は悪役っぽいからあまりやらない方がいいと思う。
「で、でも先週だってアズマさんを侮辱していたではないですか! 太ったとはっきりおっしゃっていました!」
「僕もその場にいましたがそれはアズマがエグレットだけでなく女性に対して失言を放ったからですよ。アズマだけでなくエイロンもですが」
今度はビオロ様が庇ってくれて、アズマとエイロンはものすごい勢いで何度も頷いている。
「で、ですがっ。アズマさんが入学された初日に何でこんな所にいるのかと詰め寄っているのを私は確かに見たんです! アズマさんが平民だからと……!」
「それは違います! エグレット様は身分で差別なんかしたりしません! だって平民の私にも平等に優しく接してくださっています! この間だってお屋敷に招待してくれたんですよ!」
あ、コルセイユさんまで私を庇ってくれた。
金髪令嬢が何か言うたびに周りが庇ってくれて、周りの視線が段々私から相手に変わっていってるけど……言われてみれば私がアズマにしている事ってまんま苛めなんじゃ……。
「子供の頃会ったきりだったアズマと学園で会えばそう言ってしまうのもおかしくはないと思いますよ」
「え?」
「僕とエイロン、それにエグレットは十歳の時にアズマと会っているんですよ」
「はい。倭国の料理を知りたいと父が呼ばれ、俺もそれについて来ました」
「あー、もう会うことはないと思っていたからアズマを見つけた時は驚いて詰め寄ったように見えたかもしんねえけど、別に責めてはいないな」
「そ、そんな……」
金髪令嬢は完全に戦意喪失って感じで、でもアズマは変わらずまだ私を庇ってくれている。
もしかして、苛めにはなっていない? それとも気づいていないだけ? どっち?
アズマ本人に聞いてみようかなと思ったら、金髪令嬢にまた睨まれた。
何でそんなに敵意強いの。私は貴女と初対面だし、接触もしていないから嫌われるような事はない筈なのに。
「ですがエグレットはテストで不正をされています! 入学初のテストでほぼ最下位でしたのがいきなり十位なんて不正を働いた何よりの証です!」
「エグレットは入学時から筆記は満点でしたよ」
「ああ、今回も満点だったよな」
「う、嘘……い、いえ! なら賄賂! そう、公爵家が学園側に何か賄賂を贈るか脅迫して不正に順位を上げさせたんです!」
「ほう、聞き捨てならんな」
いきなり聞こえてきた低い声にそっちを向いたら理事長がいた。
え、何で!? こんな場所で騒いでいたら教師が来るのは分かるけど何で理事長!?
ゲームオーバー!? ゲームオーバーなの!?
不正していないのに退学!?
でも理事長の視線は私ではなく相手の令嬢に向いている。
助かった……? でも金髪令嬢は助かっていない。
「生徒が揉めていると言われて来てみれば……この学園が、私が相手の身分如きで待遇を変えるような不正をよしとしていると?」
「あ、いえ、それは……」
「学生達の成績は私も確認している。エグレット・ミュレーは何の不正もしていない。最初の成績が低かったのは魔法を全く扱えず暴発させただけでなく部屋も破壊したからだ。それよりも、証拠という名のただの思い込みで人を陥れるだけでなく私まで侮辱するとは……お前はこの学園に相応しくないな」
あ、これゲームオーバーの時のセリフ。
相手の令嬢も理事長が言っている事が分かったらしく顔が真っ青で震えている。
「ア、アズマさん! 貴方は優しいからエグレットの苛めに気づいていないだけです! この場ではっきりおっしゃってください! 私は貴方の味方です! エグレットの身分なんか気にせずどうかご自分の感情を隠さず正直になってください! 何があっても私が守りますから!」
金髪令嬢が縋るようにアズマの制服の裾を掴んだ。
……もしかしてこの子、アズマの事が好きなんじゃ……だからアズマと仲の良い私に嫉妬して敵視してたのか……。
「……分かりました。俺の思っている事を正直に話します」
そう言ってアズマは令嬢を振り払うようにしてこっちへと向き直った。
え。やっぱり知らない内に苛めていたのか……それだけはしないようにしていたのに……でも知らなかった、そんなつもりじゃなかったは通用しない。
「エグレット様!」
「は、はいっ! 覚悟は出来ています!」
「好きです!」
「え?」
「初めて会って、オムライスを作ってくれた時の事を今でも覚えています。あの時から俺はエグレット様の事をお慕いしております、これから先を一緒に過ごしたいと思う程に」
「え、えっ」
苛めの告発からのまさかの告白って……全く予想していなかったんだけど……私どうしたらいいの?
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