第55話 寝坊する人

「え、この時間って?」


 つぐみは茫然と時計を見つめる。

 今日は多木ノ駅で、見えない店を探そうと思っていたので昨日は早く寝たのだ。

 確か布団に入ったのが、まだ午後八時くらいだったはず。

 そして今、時計は午前十一時過ぎを指している。


「良く寝た。すごくよく寝たな~、私」


 などと言っている場合ではない。

 慌てて身支度を整える。

 かなり空腹ではあるが、駅で何か買って食べればいい。

 とりあえず見に行くことが最優先なのだから。

 沙十美からもらったブレスレットを着け、準備は完了だ。

 そっと星のチャームに触れる。


「今日こそ、お店と沙十美を見つけるんだ」


 扉を大きく、いつもより強めに開くと、つぐみは駅へと駆け出して行った。

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