第44話 くらいへやで7(Sノオモイ)

 静かな静かなくらい部屋。

 沙十美は一つの結論にたどり着く。


 考えた、考えた、たくさん、たくさん、考えた。

 だけど、どうしても自分自身が助かる術は思いつかない。


 自分に出来る事。

 それは、もう一つしか思いつかない。

 そしてそれが叶う可能性はとても低いのを、沙十美は十分に理解していた。


 だが沙十美は諦めない。

 奥戸からの言葉がそのきっかけだ。


 沙十美の渇望の力はとても強いと。

 いずれ奥戸達の糧になり一部になると。

 この言葉に沙十美は賭けることにした。


 こんな自分だけど、つぐみを助けたい。

 守りたい。

 その強い願いを。

 念いを込めて。

 今からそれを試してみることにする。


 沙十美は小さくある言葉を呟き始める。

 その呟きは。

 その念いはいつまでも、いつまでも続いていく。

 自分が消えてなくなるまで。


 ――この黒い水になってしまうまで。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る