第12話 探してみよう

「うふふふ~、素敵だなぁ。えへへへ~」


 つぐみは左手首に光る銀色のブレスレットをながめ笑顔を浮かべる。

 

「ふふ、部屋でゴロゴロしながら眺めるブレスレットって、素敵だったんだなぁ。いや、部屋じゃなくても素晴らしいことに変わりはないか」


 そっと撫でながら今日のことを思い返す。


『これ、昨日かってきたの。私なりに一生懸命に選んだつもりよ』


 照れながら話す沙十美の姿が浮かんだ。

 仰向けになったまま、手を上へとかざしていく。

 動きに合わせ照明に反射して、沙十美の笑顔のようにキラキラと輝く。

 手首を小さく振ると、小さな星がゆらゆら揺れて流れ星のようだ。


 品子の一連の騒ぎで沙十美にタルトリベンジの提案も出来ず、タイミングを見失っている間に彼女は先に帰ってしまっていた。


「……せっかくお礼したかったのになぁ」


 そのまま腕を下ろして自分の目をおおう。

 星のチャームがまぶたに触れ、ひんやりとして気持ちいい。


「そうだ!」


 がばりと起き上がり、時計を見る。

 時刻は午後四時半を少し過ぎたところだ。


「私も沙十美にプレゼントをしよう。できれば同じお店でこっそり買ってサプライズで!」


 今までの沙十美との会話をつぐみは思い出していく。


 店の場所は多木ノ町の駅から五分位と言っていた。

 雑貨屋であれば、そんなに早く店を閉めることはないだろう。

 逆に遅めに行った方が店の照明などで、気づけるかもしれない。

 沙十美の家の方向を考えれば、だいぶ範囲は絞れるはずだ。


 そうと決まれば居ても立っても居られない。

 つぐみは駅に向かおうと家を飛び出していく。



◇◇◇◇◇



 駅に着いたつぐみはとりあえず周りを見渡す。


「もう少しお店のことを聞いておけばよかったなぁ」


 とりあえずは、彼女の家の方に向かってみることにする。

 夏の暑さのせいか、夕方の時間とはいえ人は少なめだ。

 空もまだオレンジ色に染まる気もないようで、青い色を一面に描き出している。

 そもそもこの駅は、沢山の人が利用する方ではない。

 どうやら周辺のお店というものがあまりないようだ。

 あちこち歩き回っているうちに、時刻は午後六時を過ぎてしまっていた。


「やっぱり考えが甘かったかなぁ」


 駅から五分どころか十分ほど歩いたところに来たつぐみはため息をつく。

 さすがに喉が渇いてきた。


「何か、飲み物が欲しいな」


 少し戻ったところにコンビニがあったはずだ。

 そこで飲み物を買ったら、とりあえず今日は帰ることにしようと決める。

 明日、沙十美と会話をすればもっとヒントが得られるはずだ。

 気合を入れて再び歩き出そうとしたつぐみの耳に聞こえてきたのは、怒鳴り声と何かがガシャンとぶつけられた音。


 怖い、どうしようと思う前につぐみはそちらに向かって走り出す。

 なぜならば今、聞こえた声は間違いなく沙十美のものだったからだ。

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