朝。


いつもと変わらない一日の始まり。


学校に行き、つまらない授業を消化し、帰宅部の僕は特に寄り道せずに家に帰る。家に帰ると、日課になっているオナニータイム(二時間)。


青春が過ぎ去るのが速すぎて、その残像すら見えない。



「はぁ~~」



起きてから数えて、10回目の重い溜め息が、唇を震わせた。




「お前って、無気力なダメ人間だよなぁ」



僕の隣で、高校に入って初めて出来た友達の河合………なんとかが蔑むように僕を見ていた。河合は、サッカー部のエースであり、現在進行形で青春を謳歌している勝ち組だった。



「う~ん。ヤバイよなぁ、このままじゃ」



「あのさ、そんなお前でもやる気が出るような刺激を与えてやる。今度の土曜に西高の女子とさ、合コンするんだよ。お前も来い。可愛い彼女作れば、変わるって。世界が」



世界かぁ。変えたいのは、山々なんだけど。


でも僕には、好きな人がいるし。その子としか初エッチはしたくないしぃ。


古いのかなぁ、この考え方。




ブルルルル………。



「なんだ、あの蛇行してる下手くそは。酔って運転してんのか?」



ブルルルル、ブルルルル。



でもこのままじゃ童貞のまま、下半身が化石化しかねない。それに試しに一度チャレンジしてみることも大切だ。



「こっちに向かって来る? ウソだろ、前田っ!! 」



はぁ~、何だかワクワクしてきた。



「あのっ、その合コン参加しまーーーブッっっびゅ!?」



何かが背中に物凄い衝撃で当たり、簡単に宙に舞うこの体。



空から下界を見ると、ポカンと口を大きく開けた河合がいて。そのすぐ横に大破したバイクがあり、その運転手であろう人物が、宙を舞う僕を眩しそうに見上げていた。ヘルメットを優雅に外した女。



あぁ……やっぱり、綺麗だなぁ。学園のアイドルで、僕がずっと前から好きな女性。




鮎貝ーーーーー。




「あっぐゅぶっ!!!」



ボロ雑巾の如く、激しく地面に叩きつけられた。薄れゆく意識の中、何かがポタポタと僕の頬を濡らしていた。





その日。


僕は、十七年の短い生涯に幕を閉じた。


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正義と惡の戯れ カラスヤマ @3004082

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