第1話【人を信じるばかりでは、壊れてしまう】

中学2年生のある日。

選択授業中に、彼女は、ものすごく傷ついてしまいました。

『選択授業』というのは、自分で好きな教科を選んで行う授業の事。

彼女は、あえて苦手な体育の授業を選択していました。

しかし、体育を選択しているのはみんな体育が得意な子ばかりで、美由は仲間外れにされかけていました。



6月のその日の授業は、バドミントン。

ダブルスでやる事になったんですが…。

「神崎さんとやりたくないです!」

急に美由と組む事になった子が、「嫌だ!」と泣きながら訴えだしたんです。


“いやいや…。中2のクセに、泣くなよ”と思いましたが、泣いている子の気持ちも、分からなくもなかった。

運動音痴な美由と組めば不利なのは誰にだって分かる。

でも、それでも割り切れないものか?


すると、教師が信じられない行動に出たのだ。

「そうよね。嫌よね」

そう言いながら、泣いている子を抱きしめたのだ。

普通なら、その子を叱責してもおかしくない場面。

美由はその教師の行動に深く傷つき、体育館を泣きながら飛び出しました。



そして彼女は、8年間表に出ず、中学入学時からの記憶を失くしてしまいました──。

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