第8話後輩とプレゼント選び1
俺の視界にブランコがあり、誰も漕いでいない。
急に視界が暗くなり後ろから優しい声が聞こえる。
「だぁれだ!」
聞き覚えがある声だった。
「花宿先輩ですね」
「せぇかぁい」
どれだけ待っても視界が暗いままだ。
「合ってるんですよね、何で目隠しを続けてるんですか?」
「霜河君、告白してもいいですか?」
「別れるとかじゃ......ないです、よね」
「私は、霜河君の──」
彼女の告白の途中で目覚め、上体を起こした。
花宿先輩とまだ公園なんか行ったことはない。
不吉な夢に思えた。
ショッピングモールの座り心地が悪い椅子に座って水倉を待っていた。
時刻は10時30分。
目の前を通りすぎていく通行人。
20分後。
「遅れてごめん、弘貴。食事おごるから」
「......」
「弘貴、ごめんって」
「......」
「弘貴ってばぁっ」
「いてぇ。何すんだよ、おま......いや、水倉さん」
頭をはたかれ、声をあげると水倉が立っていた。
「ごめんなさいっ......って水倉さんっっ!今日の弘貴ってば変だよ」
「え、いやいつも......通り、ですよ」
「いつもの冷たい、感じっていうの?言葉にキレっていうの?が感じないけど。それにさん付けなんて今まで一度もされてないよ、弘貴に」
「そうだ、っけぇ。ははは」
「なんかあったの?目が据わってるし、心ここにあらず、みたいな」
「なん、でもない......行くか」
俺は、立ちあがり歩きだした。
「う、うん。ぼそぼそしてるし、弘貴らしくない。変な弘貴」
「何か言った、水倉さん」
「ううん。何でもない」
彼女から漂う匂いがいつもと変わっていたことに気付くのは昼食のときだった。
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