【第十四話】魔法医師 13
「アハァーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァァアアアアアアアアアアアアア!!!!やったわッ!!とうとう……ッ!!とうとう"あの子"と、接点を持てた……ッッッ!!!!」
ウィクシルの声は相当大きく、声の振動でビリビリと空気が震えるほどだった。
この店には完全に音を遮断する魔法がかけられているため、音漏れを気にすることもない。
「ウフフフフフフフフフ……ッ!!コレで、あの子たちは『ディオドラス鉱山』へと向かうはず……ッ!!長年温めてきた計画を……ッ!!今こそ実行に移す時よッ!!」
ウィクシルの話した内容は、『ミッドカオスとディオラスの同盟』や『黄泉ヶ丘の攻略』以外、そのほとんどが嘘で塗り固められていた。
本当の目的は、『恭司とスパイルをディオドラス鉱山へと向かわせること』。
そして……
「あの山には大事な仕掛けをしっかり仕込んでおいたわ……ッ!!これで、あの子の力は私のもの……ッ!!日本国の生んだ『鬼の力』は、これから私のモノになるのよッ!!」
すると、
ウィクシルが叫ぶ中、店にある家具や天井はどんどん消えていった。
比喩表現ではない。
まるで元からそこになかったかのように、物が片っ端から透明になって、溶けるように消滅していっているのだ。
店がどんどん店でなくなっていき、建物としての形を失っていく。
「長かったわ……ッ!!"あの時"から"約10年"……ッ!!身を焦がすような時間だったッ!!」
黄泉ヶ丘の攻略にドラルスの壊滅は確かに必要で、本当のことだった。
しかし、
それくらいは元々、"ウィクシル1人でどうにかなる"話だったのだ。
欲しかったのは、もっと別のモノ。
ウィクシルの目的は、メルセデスを潰すどころじゃない。
ウィクシルは、"全て"が欲しかったのだ。
だから、
そのための人材と、"鍵"を用意した。
この強者ひしめく"世界大戦"を踏み躙るために、ウィクシルは約10年も前から、周到に準備してきたのだ。
さっきまでの優しい微笑みは完全に消え去り、今では醜く悪魔的な笑みを浮かべている。
これが、ウィクシルの本当の姿ーー。
ウィクシルは店内の物を全て消し去ると、最後は自分だけが残った。
地面に1人立ち、周りの人間は、誰もそれに気が付かない。
「あとは、これからどうなるかを見届けるだけ……。"あの時助けてあげた"借りを、今こそ返してちょうだい」
ウィクシルは最後にそう言うと、露出した地面の中に溶け込んでいった。
掘ったわけでもなく、落ちるように中へと潜り込んでいったのだ。
もうそこには、店はもちろん、何一つとして残ってはいない。
元から何もなかったように、ただの空き地だけが、そこに取り残されていた。
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