【第十四話】魔法医師 12
「あぁ…………。大丈夫だ」
「??」
恭司の表情は芳しくなかった。
何か、妙な引っ掛かりを覚える。
会話の中で特に違和感はなかったはずなのに、スッと腹には落ちてこないのだ。
だが、
ウィクシルが言っていることは正に正論で、そうしない方がいい理由は特にないし、代替案も見つからない。
恭司の勘違いだった可能性もある。
とりあえず、今は気にしないことにした。
「じゃあ、後は黄泉ヶ丘の攻略法についてだけね」
ウィクシルは仕切り直す。
今回も、スパイルが対応することにした。
「あぁ、そうだな。確か、ドラルスの壊滅もそれに繋がってるって話だったか?」
スパイルは気兼ねなく会話を続ける。
スパイルもまた、今は気にしないことにしたようだった。
「そうね。タネをあかせば簡単な話よ?さっき、黄泉ヶ丘に咲いている花は魔法製だって話をしたわよね?」
「あぁ、そう言ってたな。人の心を惑わして、蝕んでいくんだったか?」
「そうよ。あの丘の攻略は、あの花をどうにかしないとどうしようもないからね。それが、ドラルスの壊滅に繋がるの」
「……?どういうことだ?」
「あの花の規模を維持するには、相当な魔力が必要になるのよ。相当大きく広く……魔力を浸透させなければならない。でも、それだけ広くするためには、メルセデス側からだけじゃ魔力を通しきれないの」
「……魔法のことはよく分からないんだが……要は距離的に遠すぎるってことか?」
「そういうことよ。メルセデス側から見た範囲は対処出来るでしょうけど、奥は無理。ならどうすると思う?」
「……ドラルス側にも、魔力を通せる奴を配置しておく……ってことか」
「正解よ。流石、頭いいじゃない」
「……………………」
「ドラルス側からの魔力供給が無くなれば、流石にあの花の規模を維持しきれないはずよ。今まではドラルスが『中立』都市だったがために、攻め入るには他国を気にしてなかなか実現しなかったけど……アナタたちならその点も関係ないしね」
ウィクシルはそう言うと、店の奥から地図を取り出してきた。
それぞれの街区や主要建物の位置まで記された、ドラルスの全体地図だ。
そして、
その地図の中には、チェックの付いた所が10箇所ほどあった。
「これは?」
恭司が尋ねる。
「このドラルスに潜んでいる、メルセデス側の駐在員たちの居場所よ」
「何だ……そんなことまで分かっているのか。それなら、単にそいつらだけ殺しておけばいい話じゃないのか?」
「ダメよ。こんなの分かるの私くらいのものなんだから、やった瞬間に私の仕業ってバレちゃうじゃない」
「………………」
「私は、現状、メルセデスを抜け出した反逆者ってことになってるからね。ピンポイントでやったら、私がここにいると宣伝するようなものだわ」
「なるほどな……」
恭司とスパイルは、頭の中でそれぞれ内容を整理していった。
『魔法』というよく分からない存在に首を突っ込むことになったが、それでメルセデスに攻め込めることになるのだから、悪い展開じゃない。
ミッドカオスやディオラスから一時的に身を隠すことも了承してもらっているのだから、他に聞くこともなかった。
2人はそれぞれ頷く。
「これで、同盟成立ね。私たちはこれから同志よ。アナタたちの目的が何かは知らないけど、私の目的のためにも、これから一緒にメルセデスを倒しましょう」
「あぁ」
「そうだな」
そうして、
ウィクシル、恭司、スパイルによる同盟が発足し、共にメルセデスと敵対することになった。
恭司とスパイルはウィクシルに礼を述べると、店を出る。
ウィクシルはその扉が完全に閉まったことを確認すると、歓喜のあまり、小刻みに身を震わせ始めた。
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