【第十一話】ティアル・サーライト 13

「ぐはァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」



ティアルから放たれた蹴りは拳以上の威力だった。


ガードした腕が悲鳴を上げ、未だに衝撃が体中を蝕んでいる。


体が何度も血をバウンドし、意識が飛びそうになった。


しかし、


ティアルはそこで、またしてもスパイルに追い縋ってくる。


もはやお決まりのように、自分で吹き飛ばしたばかりのスパイルを自分で追いかけてきて、追撃の体制を整えていた。


トドメを刺すつもりだ。


さっきまで50メートルの剣のようだった両腕は、いつの間にか両腕とも槍のような形状になっている。


ティアルは跳び、スパイルの上で両腕を構えた。



「カァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」



上から走る衝撃波ーー。


一瞬、ティアルの腕が消えたように見えた。


ティアルは両腕の槍を、マシンガンのように連続して放ってきたのだ。


上からシャワーのように連続の突きが降り落ちてきて、思わず体が強張る。



「く、くそォォォオオオオオ!!」



スパイルは咄嗟にブレスを吐いて、反動で後ろに下がった。


途端、



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォオオオオオオオオオオオ!!



スパイルの目の前の地面が一瞬にして抉り取られる。


一瞬の内に空いた大穴ーー。


あんなのに当たったら木っ端微塵だ。


文字通り、粉々にされてしまう。



「避けるなってェ!!言ってんだろうがァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」



ティアルは槍状になった片方の腕を、スパイルに向けて伸ばしてきた。


スパイルの顔面にまっすぐ向かってくるそれを、スパイルは間一髪爪で防ぐ。


またしても後ろに吹き飛ばされるが、ティアルはそこに連続して腕を伸ばしてきた。


凄まじい回転力で、目にも留まらぬほどの速度で突き突き突き突き突き突き突き……



「く、し、ざ、し、だァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



エゲツないほどの迫力だった。


まるで暴風のように繰り出される手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手ーー……。


ティアルは両腕を何度も何十度も前へ前へと伸ばし、先端が槍状になったそれを、何百何千と突き出してくる。


まるで突きの嵐、いや壁だ。


連続して行われる突きの猛ラッシュ。


その突きはとうとう、スパイルの体にも被弾した。



「ぐあァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



スパイルの肩に、ティアルの尖った腕が深々と突き刺さる。


槍状になったそれは完全に向こう側まで貫通し、ティアルはニタァァァァと嫌らしく笑った。


ティアルはスパイルの肩に貫通させたそれを固定すると、そこから引っ張るように腕を戻していく。


そして、


口を大きく開けた。



「いただきまぁぁぁぁぁぁぁすッ!!」



すぐに分かった。


ティアルはこのままスパイルを食うつもりだ。


腕を戻す勢いのまま、あの牙のような歯で噛みつこうとしているのだろう。


スパイルは瞬間的に息を吸い込んだ。


もう、命に関わるなどと言っていられない。


このままだと、スパイルはティアルの腹の中で人生を終えることになる。


もはや思考するより早く、体の方が先に動いた。



「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



口から飛び出したブレス。


スパイルの必殺技ーー。


それはカウンターになって、ティアルに直撃した。



「ぐあァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」



ティアルはそれで動きを止め、腕を戻していた時の勢いは消失する。


だが……

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