【第十一話】ティアル・サーライト 12
「カァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
響くティアルの叫び声。
目を向けると、ティアルが腕を上に振り上げ、その腕が天に向かってどんどん伸びていく姿があった。
50メートルはあるだろうか。
棒状の鉄が上に伸びて伸びて、やがてそれは、刃物のような形状になっていく。
「あ、れ、は、ヤ、バ、い!!」
何軒もの家を通過しながらその光景を見ていたスパイルは、その瞬間すぐさま横に跳んだ。
途端、
ティアルはそれをスパイルに向けて下に振り下ろし、そこに縦の斬撃を築く。
ドォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
大地が割れ、家々が破壊され、轟音が鳴り響いた。
その威力は見るも明らかだった。
明らか過ぎていた。
あの50メートルもありそうな鉄の塊は、ティアルの作った、長大も長大な、巨大な一つの剣だったのだ。
「避けるなァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ティアルの怒声が響く。
すると、
50メートルもの剣はそこから凄まじい勢いで横に振り切られた。
今度は横向きの斬撃がそこに築かれ、さらに何軒もの家が斬り裂かれる。
スパイルはそこから辛くも上に跳んで避けた。
あんなに巨大な代物が、普通の剣を振るような速度で走り抜けていくのだ。
気付けば、体中から汗が噴き出ていた。
(何なんだ……!!アレは……ッ!!)
驚愕のあまり、思わず放心する。
あの巨大な物体と斬撃がひっきりなしに目の前を過ぎ去っていく光景を見て、スパイルにはコレを防ぐ術も、避け続けられる未来も思い浮かべられなかった。
いくら何でもコレはない。
こんなにも絶望的な戦いは経験したことがない。
「さあさあ!!カッカッカッカァ!!死ね死ね死ね死ねェェエエエエエエエエエエエエ!!テメェはミンチだ!!身体全てをグチャグチャにしてッ!!ハンバーグみたいにして食ってやるゾォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
耳をつんざく不協和音。
ティアルは50メートルになった両腕を軽やかに動すと、スパイルの目の前を家ごとズタズタにして、獣のような咆哮を上げた。
そして、
スパイルが放心している隙に、ティアルは一瞬にしてスパイルとの距離を詰める。
あの剣のような腕が、気付けば頭の上にあった。
「何ッ!?」
失態だった。
上から振り下ろされたそれに、スパイルはギリギリ爪でガードする。
上から凄まじい重力がのしかかり、足がその下の民家を突き破って、地面まで叩き落とされた。
(なんつー馬鹿力だ……ッ!!このままだと押し潰される……ッ!!)
地面が足をつけている所からどんどんヒビ割れていき、次第に体が下へ下へとめり込んでいく。
スパイルは渾身の力で横にいなした。
体が悲鳴を上げる中、振り下ろされた腕は何もない地面を叩き斬る。
だが、
安心するのも束の間ーー。
ティアルは即座にスパイルに近づき、次はトゥーキックするかのように足を後ろに振りかぶっていたのだ。
何をするつもりかは見れば分かる。
スパイルは避けられないことを察すると、咄嗟に腕でガードした。
その途端、
ドガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!
足は鞭のようにシナって、伸びると同時にスパイルごと街を無茶苦茶に壊滅させた。
勢いと威力に体が浮き、ガード越しにダメージが響く。
スパイルは、またしても吹き飛ばされた。
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