【第十一話】ティアル・サーライト 11

「行くぞォォオオオオオオオオオオオオオ!!」



スパイルは両腕の筋肉を目一杯使い、ティアルをジャイアントスウィングするように振り回した。


ティアルとスパイルの体格は似たようなものだが、ティアルの体は相当重い。


だが、


スパイルの筋肉量も相当なものだ。


スパイルはそのまま渾身の力を込めて、ティアルを投げ飛ばす。



「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」



ティアルの体は、一番近くにあった家に突っ込まれた。


ティアル自ら作り出したクレーターを飛び越える形で、ティアルは家に体を放り込まれる。


その衝撃で家が全壊する中、スパイルは上に跳んでいた。


ティアルのいる所目掛けて、宙を跳び、両足を折り畳む。



「死ねッ!!」



スパイルは上から、足をスタンプにしてティアルの腹を踏み抜いた。


ティアルの体は地面に減り込んでいき、この場にまた一つクレーターが作り出される。



ドガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!



舞い上がる土煙に、破壊の余波があっという間に周囲を伝播して、凄まじい衝撃が辺りを襲った。


スパイルはそんな中、即座に右手を拳に変える。


そして、


流れるようにそれを顔面に叩きつけた。



ドォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオン……ッ!!



「ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」



ティアルも思わず声が出る。


放たれた拳の威力は先ほどのスタンプ以上だった。


それはまたしても地割れするほどの衝撃を放ち、その余波は辺りに一際大きなクレーターを作る。


さっき作られたばかりのクレーターもそこに呑み込まれ、地面が轟音と共に縦に揺れた。


しかし、


そんな中、


ふと走り抜けた寒気ーー。


迸る悪い予感ーー。


見ると、顔面に拳が直撃した状態のまま、ティアルは横からスパイルの腕を掴んできていた。



「何ッ!?」



スパイルも思わず声を上げる。


そして、


ティアルはそこから力づくで腕を顔面からどかすと、そのまま握り潰さんばかりの握力で締め付けてきた。



「が、がァァアアアアアアアアアアアアアアッ!!」



腕の筋肉が悲鳴を上げ、思わず叫ぶ。


痛みが体中を駆け回り、スパイルは驚愕に表情を歪めた。


ここまでして、ここまで追い込んで、まだこんなに力が残っているとは思わなかったのだ。


まさかの事態に頭が一瞬パニックになる。



「今のは、痛かった……。すごく、痛かったぞ…………スパァァァァァイル……」



ふと、ティアルの声が聞こえてきた。


目を向けると、ティアルは鬼の形相で、スパイルを睨み付けている。


その目は、激しい殺意に塗り固められていた。



「この俺様にここまでやってくれたのはテメェが初めてだ……。だから、だからなァ!!」



ティアルはスパイルの腕を掴んだまま、立ち上がった。


スパイルの腕の力も相当なはずだが、ティアルの握力はそれを大きく上回っている。


ティアルとスパイルでは、持っているパワーすら、ティアルの方が上なのだ。



「テメェは絶対に……ッ!!生温くは殺さねェゾォォォオオオオオオオオオオオオオ!!」



すると、


今度はスパイルがティアルに投げ飛ばされた。


ボールを投げるように上投げされ、身長180センチを超えるスパイルの体が、凄まじい勢いで宙を滑走する。


その過程で家々をいくつも破壊していき、スパイルは何度も家との衝撃に体を痛め付けられた。


そして、


事態はさらに動き出す。


投げられてる最中、とんでもない悪寒がスパイルを襲った。

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