【第十一話】ティアル・サーライト ⑦
「カカッ!!しかし、お前の母親も不憫な話だなァ!!聞けば、ほとんどレイプみたいなもんだったみたいじゃないかッ!!たまたま親父が立ち寄った村で、たまたま良さげな女を見て、そのままムラムラしたからヤッちまっただけなんてよォ!!」
「…………」
「親父もまさか子が産まれてるとは知らなかったらしいが、玉座の間でお前を見た時にピンときたらしいぜ!?流石は親子ってことなのかねェ!?確かによく見りゃ似てるもんなァ!!親父の血を引いてるってんなら、お前が4位に上がれたのも納得だァ!!そりゃあそれくらい出来てなきゃおかしいだろうよ!!仮にも俺様の兄弟な訳だしなァ!!」
「……虫唾の走る話だ」
母親のしてくれた話を思い出す。
母親は、ルドルフと子を成してしまったことをずっと気に病みながら毎日を過ごしてきた。
産んだことを後悔しつつ、日に日にルドルフの強さに近づいていく息子を見て、マジメな母親は心を病んでしまったそうだ。
スパイルが強くなればなるほど、ルドルフやティアルにバレる危険性が高まり、順位を上げれば上げるほど、スパイルはその2人に近づいてしまう。
でも、
順位を上げないと、このディオラスでは幸せになれない。
母親も悩んでいた。
このディオラスで生きていく上で、成長著しい我が子に強くならないでなんて言えない。
どう伝えればいいか分からない。
そんな時にーー
スパイルは、65位からひとっ飛びに、『No.4』になった。
「言えば良かったのになァ!!相談すれば良かったのになァッ!!何で一人で抱え込んで息子を放置なんてバカな選択肢とっちまったのかねェ!?そのバカ女は!!言えばお前も"こんなこと"までして上になんて行くことはなかっただろうになァ!!カッカッカッカァァアアアア!!」
自分の言葉を代弁されているようで、スパイルは心から不快感が溢れ出た。
今にも殺したいくらい殺気が溢れ出た。
だが、
内容としてはティアルの言う通りだ。
母親は、戦闘に限らず本当に弱い人間だったのだろう。
本当に、何も出来なかったのだ。
スパイルと相談して目立たないように順位を抑えさせることもーー。
産まれたことがバレてないうちにスパイルを殺してしまうこともーー。
スパイルの幸せを想うあまり、何も選べなかった。
何も、行動を起こせなかったのだ。
「バカ野郎が……」
スパイルの順位が上がれば上がるほど見つかる可能性が上がり、順位を上げなければ、スパイルは幸せになれない。
そのジレンマで、順位をほどほどにしておけば良かったものを、それを伝えるためには、母親はスパイルに言わなければならなかったのだ。
スパイルは、産まれながらに災厄を背負った、『呪いの子』だということを。
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