【第十一話】ティアル・サーライト ③
「た、大変です、ティアル様ッ!!侵入者が現れました!!」
すると、
兵士の一人がドアを開けて入ってきた。
普段なら叱り飛ばす所だが、状況が状況だ。
ティアルはすぐに食事を止め、返事を返す。
「誰が来たァ!!この俺様の食事を邪魔するとは……ッ!!タダじゃおかねぇぞ!!」
「そ、それが……ッ!!未だ誰もその姿を見ておらず……ッ!!」
「あぁ!?なら何で侵入者だと分かったァ!!」
「火です!!この屋敷の周りが……ッ!!全て燃やされていますッ!!」
「何……だと……ッ!?」
ティアルは急いで上へと向かった。
もう食事なんて言っている場合じゃない。
青年の死体など捨て置き、ティアルはすぐさま1階に出て、その惨状を目に焼き付けた。
一階は完全に丸焼け状態になっており、フロア内の至る所で火の手が上がっている。
焼け死んだ従業員の数も数えきれないほどだった。
ティアルは急いで屋敷の最上階へと上がり、窓を開けて状況を確認する。
「く、クソがッ!!」
そこには、
城を囲むように爆発が連鎖的に起き続けている光景が広がっていた。
ダンッ!!ダンッ!!ダンッ!!ダンッ!!と、大きな火の手が城を囲むように展開されている。
ティアルが地下で感じた熱気はコレだったわけだ。
先に起きた爆発の後を追うように次の爆発が展開され、それは城を囲んで円を描いている。
その爆発の連鎖の先……今も尚、着火を先導している先頭には、ティアルのよく見知った人間の姿があった。
スパイルだ。
スパイルは嬉々爛々と城の周りを駆け回っていて、その彼を追うように爆発が続いている。
覚えがあった。
アレは、このディオラスの王、『ルドルフ・サーライト』がよく使っている技だ。
「アイツ……ッ!!まさか!!」
ティアルはその瞬間に気がつくと、
窓から一目散に飛び出した。
なるべく遠く……遠くに行かなければならない。
何故なら……
何故ならアレは……
「炎陣……『火紅羅』」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォン!!
ふと届いた声ーー。
よく知った声音ーー。
ティアルが窓から脱すると、その後ろで巨大なマグマの円柱が築かれていた。
巨大なマグマがティアルの屋敷を呑み込み、重力に負けたそれが周囲にも広がって降り落ちている。
もう中には誰も残っていないだろう。
ティアルの屋敷は、中の従業員ごと完全に焼失させられたのだ。
ティアルは息を吸い込み、全力で叫ぶ。
「スパァァァアアアアアアアアアアアアアアアァイルッッッ!!」
マグマの噴射を背後にしながら、ティアルは強烈な殺気を辺りに弾き飛ばした。
天空から降り落ちてくるマグマは屋敷の周囲にすら影響を与え、隕石のように家々の上から火の手を上げる。
静かだった夜のディオラスに、灼熱の夜会が引き起こされた瞬間だった。
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