【第七話】逃走 ⑥
(耐えるんだ……ッ!!いつか復讐するその時まで……ッ!!ひたすら耐え続けるしかないッ!!)
恭司は走った。
走って走って走り続けた。
ビスはそんな恭司を追い、延々とナイフを繰り出してくる。
術符を使った火炎も幾度となく繰り出し、広大な森の中で何度も四角形の火柱が上がった。
それは周りの木々にも飛び火して、視界が真っ赤に染め上がっていく。
恭司はその中を、ひたすらに駆け抜けた。
「なかなかうまいこと避けるじゃねぇかッ!!だが俺も暇じゃないんでな!!悪いが遊びはここまでにするぞ!!本気を見せてやる!!」
すると、
ビスの周りにナイフが100本展開された。
数で言えば、今までと同じ……いや少ないくらいだ。
しかし、
恭司は驚愕した。
展開されたその100本は、全て術符付きで構成されていたのだ。
「くそったれ!!何だそれはッ!!」
恭司は走りながら悪態を吐く。
10年前はあそこまでのことはしていなかったはずだ。
この10年で、ビスも進化したということだろう。
さすがにマズい状況だった。
「ハァーッハハハハハハハハハハハハァァアアアアアアアアア!!絶望に震えるがいいィィイイイイイイイイ!!『三谷』の悪夢はッ!!ここで終わりを迎えるのだァァァアアアアアアアアアアアアアア!!」
ビスは術符付きのナイフを移動させると、術を展開し始めた。
これまで地面に敷くように横向きに展開されていた正方形はこの時初めて縦向きに展開され、もう悪い予感しかしない。
木々を盾にした所で無駄だろう。
あの火の勢いを見るに、そんなものは足止めにすらならないはずだ。
恭司は思わず目を瞑る。
こんな所でーー
終わるわけにはいかないのにーー。
「カッカッカッカッ。なんだァ?ずいぶん面白い展開になっているなァ」
と、そんな時だった。
ふと耳に届いた不協和音。
嫌らしくも甲高い声。
聞いたことのないくらいに不快な声だった。
そして、
その声が聞こえた途端、
ビスは動きを止めた。
来ると思っていた火炎は中止になり、恭司は走りながら、ソレを見る。
(黒い……塊?影か?)
見ると恭司とビスの間に立つように、その"影"はニヤけた顔でそこに立っていた。
木の一つにもたれかかり、"口"はいやらしく歪んでいる。
それはかろうじて人と呼べるものだった。
影のように見える体は鈍い光沢を放っていて、体は隅々まで黒々としている。
まるで金属だ。
鉄か何かをイメージさせられる体だった。
ソレが、ビスと恭司の間に立っているのだ。
ビスはその男に信じられないような視線を向け、一切動かない。
恭司もまた感じていた。
コレは、何かヤバいモノだ。
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