恋ってなんぞや?
翔丸
恋ってなんぞや?
「恋ってなんぞや?」
昼休み。席をくっ付けて対面して昼食を摂ってたら幼馴染みの
ちなみに私は
「どしたよいきなり」
あまりに唐突すぎて返答が可笑しくなった。
そして、可笑しくした主犯がぷぷっと笑ってやがるからポカッと私は頭を殴ってやる。
「それで、突然どうしたの?」
「いや、僕ら幼馴染じゃん?」
またいきなりだね。つか疑問ばっかりだな真太。
「何が言いたいの?」
「結論早ぇよ!もちと興味持って!?」
「ごめんね、実際興味無いんだぁ」
「謝って言うなやぁ〜」
真太が四つん這いになって関西弁でツッコむ。
「ターくんや、メンタル弱すぎやしませんかね?」
「ゆーちゃんは興味無いとか本気のトーンで言われたこと無いから分からねぇんだよぉ!」
ターくんはそう言いながら自棄食いし出す。
どうしよ。こうなったターくんって、本気でヘコみ出した時なんだよね。
本気で興味無かったから躊躇いなく返しちゃったこと。これ、反省しよう。
「じゃあ適当に話題出すからターくんも興味無い感じで返してみてよ」
「んぐ……分かった」
とは言ってみたけど、これターくんが興味無い事を言わないと分からないよね。
あ、そういえばターくんってスポーツ好きなのに球技系は興味無かったよね。逆に私は球技系大好きです。サッカーが特に。
だから語り合えないのがネックだったりする。
友達でいるにはいるけど、遠いから電話越しでしか無理。私は一緒に見ながら応援して、語り合いたいの!
とにかく、これで行こう。
「その前にターくん昨日のサッカーの試合でさ」
「あ、ごめん球技系興味ねぇから」
「ごふっ!」
ヤバい対応が冷たい。最初の謝罪で慰めのように感じちゃうけど、それが逆に傷を抉ってくるのね。
成る程。ターくんのメンタルがやられるのが良く分かった。
でも挫ける程かなって思うけど、これは言わないでおこっと。
「うん、ターくんの気持ちが良く分かったよ。ごめんね、興味無くても返事くらいは努力するよ」
「そうしてくれい。で、なんの話だっけ?」
「おい、なに話題者が本題わすれてんだよ。認知か?もう認知なのか?」
「幼馴染の返事が辛辣なんだけど」
「〜僕はどう返せばいいか分からない件〜」
「あってるけどラノベタイ風に入れ込むな!てか『〜』どうやってだしてんの!?」
「え?簡単簡単。〜だよ。〜って、〜〜〜ね?」
「地味な神業」
「地味言うな、地味だけど」
あぁもう。また脱線した。
話戻さないと、またターくんが忘れちゃう。
「はいはい。恋ってなんぞやという話がどうしたの?」
「ああそうそう、僕らおさ「それはもう聞いたよ。そのあと」」
「雑い!……まあいいや。で、男女幼馴染ってよく恋愛に発展するじゃん」
「それラノベ、漫画、アニメだから。あっても稀なものだからね。実際は家族みたいな感覚だから」
「そうなんだよ。僕らがその例と言っていいくらい」
実際そうだしね。
私とターくんはものの見事に両親同士からの付き合いで、16年間小中高同じ学校で、遊ぶときも大体一緒で、泊まりなんて普通で、家族旅行はいつも互いの家族とだしと、幼馴染付き合いがハンパない。
異性と思えても兄弟感覚。
あぁそう言うことね。つまり、ターくんが言いたいのは恋愛は恋愛でも幼馴染同士での恋愛発展がよく分からない訳だ。
「いててドキドキするか?」
「いてて楽しいけど、ドキドキはしないかなぁ私は」
「僕はゆーちゃんと一緒にいたいとは思うけど、独占欲とかは無いな」
「うんうん。それならターくんと違う男性と付き合う事だよねって言われると、ターくん以外の男が素敵とは思えないんだよねぇ」
「でもゆーちゃんってめちゃくちゃ告白されてない?」
確かに中学二年辺りから女の子らしい体つきに成長していって時々男子から告白されるようになった。
高校ではそれが日常茶飯事。今日も放課後に呼び出されてるし。本音は帰りたい。でも告白してきてくれるんだから無下にも適当に返事するのも違う。
殆どいやらしい目で見てくるからばっさり断って帰ってるんだけどね。
「今更?って感じ?」
「それ!分かってるねぇちみぃ〜」
その点、ターくんはいやらしい目で見ない……待って訂正。見るわ。でも、私が尋ねる前に自己申告して謝ってくれるからノーカン。
まあ、だからかな安心感があって一緒にいれる。
「恋愛って難しいんだね」
「だなぁ」
「で、答えは?」
「恋は僕には分からんってことだ」
「結局それか〜」
「うむ」
「あ、そうだ。だし巻き今日上手く出来たんだ。食べて食べて」
私はターくんの口にだし巻きを運ぶ。
ターくんはそのままパクリと一口で食べきる。
「どう?」
「旨っ!」
「もう一個いる?」
「いる」
「ほいあーん」
もう一つだし巻き卵を運ぶとターくんが咳き込み出した。
これは気管変な入り方したなこりゃあ。
そう思って私は自分が飲むつもりだったお味噌汁の容器をターくんに手渡す。
受け取るとターくんは一気に飲み干す。
「ゆーちゃん助かった」
「今度クレープ奢ってね」
「現金な」
「味噌汁も一応現金で買ってきたものなんだけど?」
「ぐぐぐ……分かったよ」
「ならよし!」
本当は気になってるクレープ屋がカップル割引で安くなってるからとは言わない私である。
「あ、ついでに買いたい服あるからそのあとちょっと付き合ってよ」
「良いけど、それでハシゴしないでよ」
「やぁだねぇ。女の子にそれは無理な話ぃ。じゃあ放課後宜しく」
「今度っつったよな?」
「うん今度。今日は下見」
「僕いらねぇじゃん!」
「ターくんいないと駄目なの!私にはターくんが必要何だよ?」
「……緊急なのか?」
下見口実じゃないと違う味を味わえない。
そう考えると確かに、うん。
「緊急だね」
「……はぁ分かったよ」
「ターくんに感謝!今度お礼はちゃんとするから!」
「お、じゃあ今度弁当作って来てほしい」
「だし巻き多め?」
「勿の論」
「り。じゃあ今度作るね。じゃあ今日はこれだけで我慢せよ。あーん」
「あむ………楽しみにしてる。味噌汁付きで」
「良く私が作ったと分かったね」
「いつも飲んでるからな」
「そっかそっかお袋の味は幼馴染みの味噌汁か」
「その一つかな」
そうなると、だし巻き卵も時間の問題かな?
ターくんは美味しそうに食べるから良いねぇ。
食べる顔が子どもみたいで可愛いからついつい甘やかしたくなる。
「これが母性か」
「結梨ママおかわりくれ」
「ふふ、いいわよ」
―――
「「「もう結婚しろや!」」」
その放課後。真太と結梨が帰ったクラスでクラスメイト全員が発狂した。
それから二人が知らぬところで熟年夫婦と学校全域で言われるようになっていった。
恋ってなんぞや? 翔丸 @morimaru
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