第139話
それとなく花音の顔を見ると、顔色も悪い。今にも泣きだしそうだ。
古城は、さっきまで伊藤氏といたが、穏やかな話し方で人当たりも良く、娘の花音の事を1番に心配している様子だった。
確かに花音の母からいままでの経緯を聞きはしたが、母子の思い過ごしではと思ったぐらいだ。
が、青ざめた顔の花音を見ると、明らかに父親の存在に怯えているようだった。
(父親が苦手だとは聞いていたが、これほどまでとは)
「俺、手術に入るから」
「うん、頼むよ!」
「ああ、任せとけって! あ、さっきも花音ちゃんに行ったんだけど、この部屋でしばらく、休んでいけば? じゃな」
アンディーは、そう言って早足で手術室に向かった。
「あいつもああ言ってるし、この部屋で少し休んで行こう。落ち着いてから、お母さんの手術の経過を見に行こう」
「はい!」
花音は古城に言われ、ほっとしたのかフラッと力が抜けたようになった。古城が慌てて抱きとめる。
「大丈夫?」
「はい」
「もう少し休んだ方が良いよ。5時間の手術だから、見ているのも相当体力がいるだろうし、暫くここにいればいいから。この部屋はアンディ専用だから、誰も入って来ないとは思うけど、用心する事に越した事は無いから、念の為、鍵をかけておくといいよ。誰がノックしても開ける必要はないからね」
古城が花音を気遣いながら、優しく言った。
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