第138話

「そろそろ、手術室に行くけど良いかな。お父さんが見学室に来てるかもしれないし、ここにいる?」


花音はそうしたいのはやまやまだったが、厚かましい気がして首を振った。それに、父ときちんと話すと決心したばかりだ。


(会うだけで、怖がるなんて、お話にならないもんね)


「いえ、見学室に行きます」


「そう? 大丈夫?」


「はい」


花音は自分を励ますように頷いた。


部屋を出ると、向こうから古城が来るのが見えたので、アンディーが軽く手を挙げた。


「賢。お前、花音ちゃんを放っといて何してるんだよ」


「え?……ああ、」


古城はすぐに察したらしく、


「オレは用があるからと、先に、見学室に行ってもらったよ。一人で対面するよりはいいかと思って……、この時間だと夫人も手術室に移動しいるし、会わずに済むだろう?」


勇気がなかなかでない花音は、古城の気遣いに胸が温かくなった。


「あ、あの、有難うございます」

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