第131話

古城の部屋の前を通ると、彼はパジャマに着替えているところだった。花音は慌てて後ろを向いた。


(び、ビックリした! そうだった。私が不安がるから扉を開けてくれてるんだった。)


ドキドキしている花音の足元をチャッピーはスキップするような足取りで通り抜けて、古城の部屋に入っていった。


「あ、チャッピー!」


振り返ると、チャッピーが嬉しそうに、彼のベッドに飛び乗っていた。


「もう、チャッピーくすぐったいだろ。分かった! 分かったから、早く寝ろ!」


チャッピーはピョンピョン跳ねて言う事を聞かない。古城はチャッピーが落ち着くまで待つつもりらしく枕の方に座った。ここは自分の出番だと思った花音は、チャッピーに駆け寄った。


「チャッピー、いい子にして、チャッピー!」


チャッピーは、花音の言うことも聞かない。


(もう! チャッピーどうしたの~!)


いつものチャッピーはとてもおとなしくて良い子なのに、古城が来てからハイテンションになることが多い。


「あのね、チャッピー!」


今度は花音に勢いよく飛びついた。


「キャッ!」


「おっと」


チャッピーの小さな体のどこにそんな力があるのか、花音は、はずみで古城の胸に飛び込んでしまった。


「ご、ご、ごめんなさい!」


「いや、大丈夫?」


「ハ、ハイ! ダ、ダイジョウブデス」


(チャ、チャッピー! 最近どうしたの? いい子だったチャッピーはどこに行ったの~?)


花音の心臓はバクバクして爆発しそうだ。


「ご、ごめんなさい!」


花音が古城から離れようと体を起こしかけると、チャッピーはトトトっと花音の膝の上に乗った。


「チャッピー!」


そして、クルクルと回ってコテンと寝てしまった。


「チャッピー、チャッピー!」


花音は思い切りチャッピーを揺すったが、飛び跳ねて疲れたのか今度は起きない。


「どうしよ……」


「起こすのは可哀そうだよ」


古城が優しく微笑んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る