第129話

「早かったんですね!」


「うん。思ったより早く片付いてね」


「おいしそうな匂い!」


「早く食べてお母さんの所に行こう」


「はい!」


彼は上手に香辛料をまぶした鶏肉を焼いて、野菜を盛り付けた。


「おいしい!」


「そうか、それは良かった」


彼はチャッピーの口に、小さく切った肉を入れながら笑って言った。


「なかなか、料理って難しいもんだね」


「ううん、とってもおいしいです!」


「こんな感じかなって、思いながら作ったけど、なかなかいけるね」


「はい!」


「クゥーン」


チャッピーがつぶらな瞳で古城を見ている。


「チャッピーを見てると、料理に自信が付いてくるよ。なっ、チャッピー」

チャッピーの頭を撫ぜて彼は笑った。


食事を終えると、病院に車を走らせた。


母の病室のドアノブに手をかけると、心を落ち着かせる為に小さく息を吸う。そして、心を決めるとキュッと手に力を入れて扉を開けた。

(パパ、来てない)


花音はほっとして、母に声をかけた。


「ママ、調子はどう、心の準備は出来た?」


「ミラー先生がついてるんだもの。心はとても穏やかよ。あら、古城さんは?」


「ミラー先生の所に……」


母は、花音を見て目一杯の笑顔で微笑んだ。


「ミラー先生、さっきも来て下さって……ほんとに花音のお陰だわ、あんな立派な先生の手術を受けられる私は幸せね」

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