第123話

「心臓の手術? そうか伊藤夫人のお体はそんなにお悪いのか……と、言う事は、アンディーも日本に来ているという事か?」


「はい、僕が呼びました」


「それにしても日本に来たなら来たと、わしに一言あっても良いと思うんだがな。お前もアンディも」


会長は少し淋しそうな顔をして言った。


「日本に着いた時、会長にラインしたと、言っていましたよ」

 

「そうか? 気付かなかったな」


「会長、スマホは手元にありますか?」


「え~と、どこだったかな。確か? あったあった。賢、ちょっと見てくれ」


スーツのポケットをごそごそと捜していた会長が、スマホを見つけると嬉しそうな顔をして古城に渡した。


「ほら!」


古城がスマホを開くと、案の定、アンディーからラインが入っていた。


「あれの事だから、わしの事を大分怒ってるだろうな。しかしな、返事を打つのがなかなかで、賢、わしの代わりに打っといてくれるか」


「はい」


古城がラインを送ると、すぐに返事が返ってきた。


「あ、返事がきましたよ」


「なんて書いてある?」

「ほら、返事がないので心配していましたって」


「ははは、すまんすまん。お前、またアメリカに行くだろう。その時、ミラー氏の様子も見てきてくれるか。わしが心配していたと」


「はい。術後の経過も大分良いみたいで、今は骨休めだと言ってのんびりした生活を送っておられますよ」


「わしも、近々お見舞いに伺うと言ってくれるか」


「ええ、早く逢いたいとミラー氏から返事が来ましたよ。暇過ぎて淋しいって」


「そうか、そうか、それぐらいなら良かった。賢、アメリカに行った時は由紀の事も頼むぞ。あの通り、気性の激しい子だから、ショックも大きいだろうと思うと、少し気になってね」


会長は、古城と花音を交互に見て淋しそうに笑った。


「来週、アメリカに行くので、その時、由紀ちゃんの様子も見て参ります」


花音の心は幸せでいっぱいになったが、会長のお孫さんの由紀さんには申し訳ない気持ちになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る