第119話

エレベーターが開くと、いつものようにチャッピーがお座りして待っていたが、古城を見るなり、タッタッタとプレイバウを始めた。古城がそれに応じるように両手を広げると、タタッと遠ざかる。しばらくチャッピーが遊んでほしそうなので、花音はコーヒーを淹れることにした。


「わ! とと……」


花音がチャッピーをよけようとしてつまずいた。とっさに古城が花音の体に手を回して支えた。花音はカーッと真っ赤になった。


「あ、あ、有難うございます」


花音は何度もペコペコすると、自分の部屋に走って行った。


チャッピーは、キョトンと花音の消えた方を見たあと、古城を見上げた。


「一緒にいてあげて」


古城の言葉に応えるように、花音の部屋の方へ行った。


古城も自室にいくと、シャワーを浴びスマホを確認した後、パソコンで明日の会議のデーターを見る。


「今日は寝るかな……」


ベッドに入ると、すぐに深い眠りに落ちた。

寝返りを打とうとすると、……うてない。

(ん?)

背中に温かくて柔らかい塊がある。


「……チャッピー……」


古城の背中で丸くなって眠っている。


いつの間にかこちらに来たらしい。花音が広い家を怖がるので、入り口のドアを開けて寝る事にしているからかも…


水でも飲もうと部屋を出ると、ドアの横で花音がシーツにくるまって寝ていた。ベッドに移そうと膝をつくと、花音の頬に涙の跡があった。


(会社の悩みや、お母さんの手術を直前に控えて、不安になっているんだな……、話せば気が楽になると思うんだけど……)


古城は花音を抱き上げると、白いおなかを出して幸せそうに眠っているチャッピーの隣に花音を寝かせた。

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