第76話

「そうかな……、親切すぎるかな?」


「だって、お前は誰にでも愛想いいけど、深入りはしないだろ? ボディガードの事だってそうだよ。普段のお前なら引き受ける訳ないだろう」


古城は黙ってしまった。


「……オレ、彼女の事を、凛と重ねて見ているのかもしれない」


自分の姿が見えなくなった時、パジャマ姿で街の中を走り回っていた花音の姿が浮かんできた。凛も小さな頃、よく自分の後を追いかけていた。


「亡くなった妹さんか」


「うん。凛と最後の会話したのが、彼女なんだ」


「何だって……?」


「彼女の話を聞いていると、俺って凛の事を全然見てなかったんだなって痛切に感じたよ。もっとよく気を付けていれば、普段の会話の中にSOSを感じ取れたかも知れないのに……」


そう言って、古城は淋しげに笑った。


「妹の話はこれくらいにして、明日からの予定を組もう」


「それより、香川教授も大変だろう。今から行ってみようかな」


「今から?」


「うん」


「午前2時だよ。迷惑じゃないか?」


「いや、教授はきっと病院にいると思うよ」


と言いながら、アンディはスマホを取り出してメールした。


「病院にいるって」


「じゃ、行こうか!」


古城は、上着をとるとサッと立ち上がった。

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