第69話

その後、古城は社長を手塚山の自宅まで送り、中津のマンションに車を走らせた。


「なあ、オレ、どこに泊るの? お前のうち? えっと……どこだっけ」


「江坂。それでいいだろ?」


「あのさ、今、花音ちゃんと住んでるって言ってたろ? なのにボクはお前のマンションで独りぼっちなわけ? ひどくない?」


「う~ん。でもなぁ……」


古城のスマホが鳴った。花音からだった。


「はい」


<<あの、お邪魔してすみません。あの、もし、アンディ先生の泊まるところまだでしたら、うちにと思って、部屋は余ってますし……。あの、差し出がましいこと言ってすみません。……き、気になってしまって……その……>>


「う~ん」


古城は返事しかねた。あまりに厚かましく感じたからだ。


<<……あの……ちゃんと母とも相談しました。だから……>>


花音はなおも言い募る


「ありがとう……。じゃあ、そうさせてもらっていい?」


<<はい‼>>


「なに?」


「ゲストルーム使ってくれって」


「わぁ、ありがとう! 花音ちゃん!」


「じゃあ、後で」


<<はい!>>


「花音ちゃん、優しいね。控えめで穏やかで。彼女みたいな子が傍にいてくれたら、癒されるだろうなぁ」


「そうだな……」


「なんだよ。歯切れ悪いな」


「彼女の母親からボディガードを依頼されて……、それだけだよ」


「ボディーガード? 日本で?」


「うん。まあ、自分が重い病気を抱えているから、娘の話し相手になってほしいんじゃないかな……」


「違うだろ?」


「なにが?」


「花音ちゃん、絶対、お前に惚れてるね。食事の時ずっとお前に見惚れてたよ。どういう経緯か知らないけど、母親は後押ししたんだろ」


「お前は何でもそっちに持っていく。長くなるから、説明は今度する」


「なんでだよ。花音ちゃん、可愛い子じゃないか」


「お前な……。そんなんで手術、大丈夫なのか」


「香川教授と相談して、明日、彼女の母親はこっちの病院に移す事になった。手術の前に、なるべく早く自分の目で病状を確認したいから」


「それ、彼女に話した?」


「いや? 連絡いってるんじゃないの?」


「それはないと思う。彼女の性格だと、必ずお礼を言ってくれるよ」


「そっか……。じゃあ、ボクから話すよ。聞きたいこともあるだろうしネ」


「ああ、頼む」


車はまもなくマンションの地下駐車場に入った。

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