21歳、1年

花宮優

21歳

機械音で目を覚まして 一人で朝ごはんを食べる

パソコンから流れる音声を子守唄に

画面の前でもう一眠りする

一人で昼ご飯を食べて のんびりテレビを見る

時間になったらまた朝と同じように画面をつける

パソコンから人の声が流れなくなったら…


一人で散歩して

一人で買い物をして

一人でご飯を食べて

一人でお酒を飲む


送別会で寂しくて大泣きした記憶

成人式の振袖や

2次会のドレスで着飾って高校の友達と大騒ぎした記憶

試験の日に顔面蒼白で登校した記憶


あれから1年が経って

確かに色々なことがあったはずなのに

マスクで息苦しいからなのか

それともただ孤独が苦しいからなのか

心があの時から進むことを諦めたみたい


私はずっと人が一人で生きていけないことを知りながらも

孤独を楽しむ強さが欲しかった

もともと社交的なタイプでもないし

一人でいることが楽しかった

でもあの頃楽しかった一人の時間は

いつでもすぐに誰かが来てくれる「一人」だった

今の「一人」はあまりにも孤独で

息苦しい


命より大事なものはないだとか

感染対策の徹底だとか

新しい生活様式だとか

偉い誰かのいう「命」には

息苦しさをお酒でごまかす人間や

タバコの本数でで孤独を埋める人間や

この世界に愛想をつかして去る人間の

「命」は含まれないみたいだ

偉い誰かのいう「新しい生活様式」は

ただ規制を我慢することを意味するみたいだ


私はこの時代を楽しむ権利が欲しい

孤独を味わう権利

誰かを感じる権利

息苦しさを堪能する権利

大きく息を吸う権利

ああ、早く息がしたい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

21歳、1年 花宮優 @hana_yuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ