最終条 エピローグ

第一項 締まらないエピローグ

――時は流れて。


 はあ、リア充爆ぜろ委員会、このお話も今話でおしまい。名残惜しいけれど、出会いがあれば別れだってあるのです。笑ってお別れしましょう。


 辛抱強く読んでくださった読者様。本当にありがとうございました。またどこかでお会いすることもあるかもしれません。その時はどうぞよろ……



 ――僕、委員長のことが好きです!



 ……


 ……


 え?


 ……え?


 待って。

 理亞ちゃん、エピローグだよ。


 わかる?

 エピローグ。日本語で言えば、いわゆるですよ?


 さっきも言ったけれど、今回のお話で、リア充爆ぜろ委員会はするんだよ?


 完結、おしまい、ジ・エンド。

 ここで告白パートに入っちゃダメでしょー?


 何言ってくれちゃってるのかな。これじゃあ、エピローグどころか、プロローグでは無いか。


 始まってしまうではないか。


 これじゃあ締まるものも締まらないじゃないか。いや、リア充爆ぜろ委員会2なんて続編が決まってるなら、まだわかるよ?


 そんな、数人の方が読んでくださっているような細々とやっている物語に、とかとかとかナシでしょ。ナシナシのナシでしょ。


 と言うか、そもそも理亞ちゃん彼氏いるじゃない。むしろリア充委員会じゃないか。とか言って本当は今の彼氏と本気で別れるつもり、もしくは別れた、過去形なのかな。


 後で理亞ちゃんに問い詰めなければと心に誓う私なのであった。


 それでも委員長は、そんな私たちの事情を知ってか知らずか、事も無げに理亞ちゃんに言ってのけるのだった。


「ああ、知っていたぞ。」


 って。

 げええええーーーっ!


 ちょい!

 ちょいちょいちょい!


 待って。

 ちょっと待って。


 委員長も理亞ちゃんの恋心を認識していたなんて、それはそれでどうなんすか。


 もうツッコミどころが満載過ぎて、どんどんがんがんお笑い第七十世代のツッコミの人たちが私の脳内に増えていって、ぎゅーぎゅーなっちゃって、脳内大混乱カーニバルだよ。お姉さん達が脳内で大きな羽つけてサンバのステップ踏んじゃってるよ!


 私の脳からプスプスと煙が出ているかたわらで、委員長は淡々と言葉を進めるのだった。


「風祭理亞が私に好意を寄せていることを知ってはいたが、まさかこのシチュエーションで、このタイミングで告白されるとは思っても見なかったぞ。風祭理亞、お前は本当に面白いヤツだな。嫌いでは無い。」


 このシチュエーションも何も、私は何も知らなかったよ。しかも皆が居るこのシチュエーションで、この完結のタイミングで、委員会室で、委員会の皆と普通に仲良く歓談していた状況下での告白。ナシでしょ。ナシナシのナシでしょ。


 そりゃ彼女も怒りますよ。


「理亞っ! 何てことを言ってくれちゃってますの?! 零様は私の、この私の恋人と言うことは誰でも知っている周知の事実でしょう?」


 そう。

 委員長の彼女、生徒会長である。


 いつも言葉遣いが丁寧な生徒会長に「いっちゃってくれてますの?!」なんて乱暴な言葉を使わせてしまう理亞ちゃんは相当なものだ。


 とは言え、生徒会長も自分が百合であることを周知の事実と言い切ってしまうのも如何なものかとも思うけれど、今回の件に関しては明らかに理亞ちゃんの方が悪いよね。


「いやー。何か勢いで僕の口からポロリと出ちゃったんすよー。」


 ポロリとって!

 悪びれもせず言ってのける理亞ちゃん。騎馬戦の時のビキニじゃ無いんだから、表現間違ってるよ。ポロリと愛の告白するってどないなのさ。


「ポロリとか、そんな軽い気持ちで告白するものではありませんわっ! 今すぐ撤回なさいっ!」


 正論だった。

 もはや生徒会長の額の血管がブチ切れそうだ。


 それも仕方が無い。

 自分の彼女を奪おうとしているのを目の当たりにして、のほほんと受け流す方が可笑しい。


 それはもう生徒会長SATを呼ばれるんじゃ無いかと言うくらいには、冷え切った、もう寒くて凍えそうな場の空気に理亞ちゃんよりも私の方がドキドキしているに違いない。


 なのに、俄然マイペース女子を貫く理亞ちゃん。


「いやぁ。別に委員長と付き合って欲しいとかじゃないんすよ。ただ気持ちを伝えたかっただけっす。僕の恋心が日に日に大きくなっていって、僕の心の中に秘めておくのが限界になったもんで。さーせん。」


 ……乙女かっ!

 思わず間を取ってからのツッコミを入れそうになる。


 まあ、私の心の中では既に理亞ちゃんに対して数千回は余裕で突っ込んでいるけれども。いやホントに。


 それでも、心がチベット平野のように壮大に広い委員長は、このどうしようも無くなった空気にフォローを入れて場を納めに入るのだった。

 

「まあ、待て百々花。人の気持ちは縛ることはできない。西園寺由宇だって、全てがわかっていて、勇気を振り絞って言ったのだ。風祭理亞の気持ちを汲んでやってくれ。」

「ですが……零様。」


「百々花、頼む。」

「零様……わかりましたわ。零様の顔に免じて今回のことは聞かなかったこととします。理亞? とは言え、零様には私という恋人が居るのですから、そこはちゃんとわきまえるのですよ。」


「あざっす! へへっ。わかってますってぇ。委員長、生徒会長、ありがとうございます!」

「まったくもう……イヤですわ。」


 と、言うことで、まあ丸く……いや、楕円形くらいに収まった感じかな。


 でもまさか。

 理亞ちゃんが。ね。


 ……って!

 私!


 これから私は理亞ちゃんに、どう接すればいいの?!


 いや、普通に今まで通り接することにはなるのだろうけれど、いやいやいや、待って?


 理亞ちゃんが委員長のことを先輩としての好き……ではなくて恋心を持っていると言うのを知ってしまったのだ。


 そんなん。

 知らない素振りをして理亞ちゃんに接することなんて、コミュ障を至極拗らせている私には到底無理な話だ。


 まったく。

 理亞ちゃんのせいで、いらない悩みがまた1こ増えちゃったじゃ無いか。



 ――ふんふふんふふふふーん♪



 一方、スッキリ晴れ晴れした表情の理亞ちゃん。鼻歌交じりにイチゴオレを飲んでいる。


 理亞ちゃんの中で、1つの恋物語が終わって肩の荷がおりたようだ。つよつよのプラス思考理亞ちゃん。私にも少し分けて欲しい。


 普通なら、委員長に振られて落ち込んで、数日、悩み苦しむと言うフローに入るのだけれど彼女の場合は違ったようだ。


 告白してスッキリした様子が見て取れる。もうサバサバしていると言うか、サバサバしすぎでしょ。と言うか。


 もし、ここで委員長がOKしたとして、理亞ちゃんが委員長、彼氏ともに恋愛関係を続けるつもりなのだったら、人としてどうなのだろうか。それではバイセクの二股じゃないか。


 まあ、でも委員長は非常識だけれども思考は大人な人なので、そもそも生徒会長と言う彼女が居るから、理亞ちゃんがバイセク二股恋愛をすることは無いと思うけれど。

 

 これで理亞ちゃんが女の子への恋愛に目覚めちゃって、例えばフリー(と思われる)の速水先輩とか好きにならないことを切に願うよ。


 ああーっ!

 ほらーっ!

 

 やっぱり締まらないじゃーん!!

 

 と、言う訳でエピローグ第二項に続きます。

 

 何だよ。

 エピローグの第二項って。


 理亞ちゃんのせいだからねっ!


 ……つづくっ!(怒)

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