第二九匹 寝床
泥跡からしばらく歩いていくと、周囲はさらに鬱蒼と植物が生い茂るようになってくる。
さすがに、この状況になると俺がナガサで通り道を作りながら進んでいく。
そうしていると、ヘカテリーナが鼻をピクピクと動かしながら、
「アキトさん、段々とイノシシの臭いが濃くなってきました。もしかすると、近くにいるかもしれません」
と、俺に耳打ちして静かに囁く。
「うん、わかった。もしものためにヘカテリーナは少し俺の後ろを歩いてくれ」
俺は万が一イノシシと不意に遭遇した場合、ヘカテリーナに危害が及ばないように考慮する。
そうして、歩いていく。すると、茂っていた草木が高さ膝丈くらいでバサバサ切られたところに出た。しばらく歩くと案の定、イノシシの寝床らしきものを発見する。
俺の狩りの鋭い勘が働き、獲物の気配を感知する。
それも複数、態勢を低くして気配を静潜させて耳を澄ませる。
「シューー、シューー」
「スューー、スューー」
微かな寝息が聞こえてくる。俺はその音を聞いて、ゆっくりと後ろへと下がっていく。
ヘカテリーナも俺が後退したのに合わせて後ろに下がってくれる。
そして、ある程度の距離を取り、ヘカテリーナに静かに語りかける。
「よし、これで集落の畑を荒らしていたイノシシの寝床と行動範囲を把握することができた。」
それにヘカテリーナは、耳と尻尾をピクピクさせて、
「アキトさん、さすがです」
と俺を尊敬の眼差しで見ながら呟く。
そんな彼女に俺は
「今回もヘカテリーナが頑張ってくれたから見つけれた。すごいじゃないか、ヘカテリーナ、すごいぞ」
俺は彼女の頭をよしよしと撫でて褒め称える。
「アキトさん、て、照れますよ~~。で、でも撫でてもらえて気持ちいいです」
そう頬を赤らめて、ニンマリと恥ずかしがる。
「それじゃあ、今日のところはひとまず集落に帰るとするか」
「はい、そうですね・・・。でも、村へはどっちに行けばいいのでしょうか・・・」
ヘカテリーナが困った顔でそう聞いてくる。
「ああ、それは多分あっちだ」
そう言って、俺は歩きだす。そうすると、ヘカテリーナが驚いた様子で駆け寄ってくる。
「アキトさん、なんでこっちだとわかったんですか? 」
その質問に俺は少し考えてから答える。
「まぁ、イノシシを追ってだいぶ歩いたから、ここらへんの地形が大方把握できたからだ。」
それにヘカテリーナは
「は・・・はぁ・・・。やっぱり、アキトさんってすごいですね」
と、またしても尊敬の眼差しで見つめてくるのであった。
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