第八匹 スポーツ
さて、俺はのんびりと丘の上で、旅団の奴らが狩りをする様を見物させてもらおう。そうして、しばらく奴らを観察していると、そのド素人っぷりに笑ってしまう。
まず、奴らは闇雲に走りまわりながら獲物のハラウサギを追いかけている。基本がわかっていない様子だ。相手は動物なのにそれを考慮せず、走り回るあたり狩りに対する想像力が欠如していると思われる。
普通、獲物には腰を低くして音を立てない様にして近づく。それが鉄則なのにそのセオリーを無視して、追いかけている。それほど、自分達がすばやいと勘違いしているようだ。
だから、言ってるそばから、近づく前にウサギに気付かれ逃げられている。しかも、それを追いかける。だが、ハラウサギの逃げるスピードに剣士は追いつけず、スタミナ切れをおこしている。
「ハハハハ、おう。走れ走れ」
俺はそれを嘲笑いながら見る。
その後も、同じような失敗を繰り返して、ようやく気付かれないように身を屈めて近づこうとするが、またここでもミスを犯している。
風向きだ。
なんと奴らは、そのことを考慮せずに風上から近づいていると思われる。故に自分の体臭をハラウサギに感じとられて、また逃げられる。それには、何度同じミスを繰り返そうが気が付かない。
そうして、一通り笑わせてもらった所で、ハラウサギの群れが段々と俺の方に近づいてくる。
「さて、ジャックハントでもしますか・・・」
俺はそう言って、ダブルアクションリボルバーに.22LRをシリンダー(弾倉)に装填していく。
9発、それがこのリボルバーの発する弾の数だ。
一発、一発、俺はその弾の感触を味わいながら入れていく。この動作は、崇高な行為であり、これから行われる神聖なスポーツの始まりを感じさせる。
そして、すべての弾倉を満たした時、俺は呟く。
「さぁ、狩りの時間だ。」
その瞬間、ハラウサギが動きを読んでリボルバーを構える。だが、まだ撃たない。まだ、その時ではない。
この間にもハラウサギの集団は、俺の読み通りこちらに向かって走ってくる。一歩、また一歩と獲物はどんどんその距離を詰めていく。しかし、俺はまだ撃たない。
それどころか、この瞬間を楽しむ。ああ、なんて心躍る時であろうか、これこそが狩りの時間だ。
そして、その感情が最高点に達した時、俺はトリガーを引く。
パァッン! パァッン、パァッン、パァッン、パァッン、パァッン、パァッン、パァッン、パァッン
残り、9羽。ウサギたちは、その銃声に驚いて反対方向に逃げていく。
カシャッ、カラカラカララララ・・・、カチカチカチカチカチカチカチカチカチ。
カシャッ。そして、シリンダーを回す。7秒の間にリロードし終え、瞬時に構えて逃げていくウサギの後頭部の真ん中を狙って撃つ。
パァッン、パァッン、パァッン、パァッン、パァッン、パァッン、パァッン、パァッン、パァッン
そして、排莢してハンティングが終了する。
この一瞬の出来事を遠くの方で見ていた旅団の奴らは、それが理解できないのであった。
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