三発目 隠れ里
第十二匹 里帰り
ある日のこと、アキトは倉庫の弾薬を確認しながら、ため息をついていた。
「う~~~ん、そろそろ弾の補充が必要だなぁ・・・。それに毛皮もけっこう集まったし、そろそろ里帰りでもするか・・・」
それを後ろで、聞いていたヘカテリーナはそれに食いつく。
「アキトさん、アキトさん、私もそれについて行っていいですか? 」
と言うと、アキトは即答でいいぞと了承する。そうして、アキトとヘカテリーナはさっそく荷造りをし始めるのであった。
「お~~~い、ヘカテリーナ。荷物の準備はできたか? 」
そう言いながら、俺はノロジカの毛皮6枚を紐でくくって背負う。毛皮一枚ならそこまで重くないが、これがだいぶ重なると少し重い。一方のヘカテリーナは、ハラウサギの毛皮18枚を紐でくくるのに苦戦している。
「大丈夫か、ヘカテリーナ? 俺もくくるの手伝おうか? 」
「いえ、アキトさん。大丈夫です、これくらいできなくちゃ、1人でできなくちゃいけないと思うんです」
そう言って懸命に頑張る彼女を俺は、感心しながら見守る。そうして、無事くくり終えたヘカテリーナと一緒に俺は家を出発する。
その道中、俺はこれから行く目的地について、ヘカテリーナに説明しながら歩く。
「これから、行くところは俺の生まれ育ったふるさとなんだ。多分、ヘカテリーナも気にいると思うぜ。ちょっと、くせの強い奴らが多いが良い奴らだから許してやってくれよな」
「へぇ~~~、アキトさんのふるさとですか。なんだか、とっても着くのが楽しみです。」
ヘカテリーナは上機嫌でアキトの話を熱心に聞きながら、彼の隣を歩く。その顔は、すこし紅潮しているようにも見える。
記憶が少し戻った日以来、彼女はより一層アキトに懐くようになっていた。だが、そのことについて彼女自身もまだ無意識でいた。一方のアキトはなんだか、最近ヘカテリーナの距離が近いな・・・と感じるようになっていた。もちろん、それについては嫌ではなかった。
その後も山越え、谷越え、テクテクと歩いていくうちに周りの木々は手入れされたものへと変わっていく。
「もう少しで着くぞ。ヘカテリーナ、後もうちょっとだ。頑張れ」
アキトはそう彼女を応援する。そう応援された本人は、歩き疲れた表情を見せていたが気合いを入れなおして、歩く。
そうして、大きな洞窟の前へとたどり着く。
「よぉ~~し、到着だ。ヘカテリーナ良く頑張ったなぁ、えらいぞ」
そう言って、彼女の荷物を持って上げる。へとへとになったヘカテリーナはふぅ~~~とその場に座り込む。
「アキトさん、ここが生まれた育ったふるさとなんですか? 誰もいませんよ? 」
と、不思議そうな顔をする。
「まぁ、ちょっと呼ぶから見てな」
そう言って、アキトは大きく息を吸い込み、大声で叫ぶ。
「おおおおおいいいいい。みんなぁあああああああ、帰ってきたぞぉおおおおおおおお」
その声は、洞窟内に反響しながら消えていく。すると、その暗闇の奥から小さい人々が大量に飛び出てくるのであった。
洞窟内から出てきた小人達は、ワラワラとアキト達の周りを取り囲んでいく。
ヘカテリーナはそれに驚いて、アキトの腕に抱きついていた。
「ヘカテリーナ、安心して大丈夫だ。みんな、俺の家族だ」
そうアキトが言うと、小人達が一斉に喋り出す。
「おかえり、アキト。おかえり、アキト」
「おおお、アキト。戻ってきたんべか」
小人達は様々にアキトの帰りを喜んでいる。
「おうおう、みんなただいま。元気にしてたか」
アキトはそう言いながら、背負っていた毛皮の荷をほどいて、一枚ずつ小人達に渡していく。
「さぁ、ヘカテリーナもウサギの毛皮を渡してくれ」
「わ、わかりました」
アキトにそう言われて、ヘカテリーナも荷をほどいて、恐る恐る小人達に毛皮を渡していく。
小人達はそれを一人一人、頭を下げながら受け取っていく。
そうして、すべて渡し終えると小人達にアキトはヘカテリーナを紹介しだす。
「みんな、この子はヘカテリーナ。良い子なんで、仲良くしてやってくれ」
「あ、ヘカテリーナです。よ、よろしくお願いします」
そう言って、ヘカテリーナは頭を下げる。
「おお、めんこい子だべ。めんこいの~」
「ほんに、ほんに、アキトにお似合いの子だ」
俺はその光景を見て、俺の家族達とヘカテリーナのファースト・コンタクトがうまくいったようで、ひと安心する。
そうして、俺たちは洞窟内に入っていくのであった。
∴ ∴ ∴
「ヘカテリーナ、大丈夫か? この先、暗いから気をつけて歩けるか? 」
そう言いながら、進んでいく。
「あ、アキトさん。少し怖いので、手を繋いでいいですか? 」
ヘカテリーナは俺のそばに近づいてくる。
ああ、そうか、俺は慣れているから怖い感じはしなかったが、ここが初めてのヘカテリーナにとっては怖かったらしい。
「ああ、いいぞ。ほら、手を繋いで」
俺はそう言って、彼女と手を繋いで歩いていく。暗い洞窟を歩いていけば、次第に洞内の奥から聞き慣れた音がし始める。
キィーーン、キィーーン、キィーーン
何かをリズム良く叩く音、俺にとっては懐かしい音。だが、一方のヘカテリーナはその聞き慣れない音に驚いた様子で、俺に質問してくる。
「アキト、ここって一体なんなのでしょうか・・・?」
「そうだな・・・、強いて言うなら、ドワーフ族の隠れ里とでもいえばいいのかな? 」
その言葉を聞いたヘカテリーナは、、
「あのドワーフ族ですか! は、初めてお目にかかりました」
と、言って大層驚いた様子なのであった。
キィーーーン、キィーーーン、キィーーーン
洞窟内に鉄を叩く音が反響して響いている。
ヘカテリーナは最初、その聞き慣れない音にビクついていたが、徐々に慣れ始めていた。
そうして、洞窟内を進んでいくとかなり広い空間に出た。
そこには、先ほど迎えてくれたドワーフ達がせっせと鉄を叩いていたりしている。
「この音、この雰囲気、我が家に帰って来た感じがするぜ」
そう言いながら、アキトはしばらく小人達と楽しそうに話しながら、歩いていく。
そうして、洞窟内の上の壁がぽっかり穴が空いた場所にたどり着く。そこは風通しが良く新鮮な空気が漂っている。
そこには、小さな小屋らしきものがあり、他の小人達が使っている物とは違う大きさである。
「と~~ちゃく~~、ここが俺の実家だ。ちょっと狭いが、まぁくつろいでくれよ」
俺はそう言って、旅で疲れた身体を少しだけ休ませるのであった。
そうして、少しだけ休憩し終えた頃、小屋をコンコンと誰が戸を叩く。
「はいは~~い」
と、俺は戸を開くと、そこには見知った顔がいた。
「よう、アキトの旦那。久しぶりだな。」
「ああ、スミスの旦那も変わりなく元気そうじゃねぇか。いや、よかったよかった」
「っははは、オラ、生涯現役よ。ところで、アキトの旦那。ここに来たってことは弾の補充に来たんだろ。
暇ときでいいから、俺の工房に寄っていってくれ。見せたいものがある」
俺はそう言われると、ものすごく興味が沸き立つ性分なので、即決で
「おう、それじゃあ、今から見に行こうか」
と了承する。それを聞いたヘカテリーナもついていくと言って聞かないので、連れていくことにした。
∴ ∴ ∴ ∴ ∴ ∴
俺の家から、歩くこと十分ほどで、スミスの旦那の工房に到着する。
到着して、すぐにスミスの旦那は、工房の奥から長い銃身の銃を持ってくる。
「ッハハハハ、アキトの旦那の親父さんが残してくれた設計図から作ったショットガン・・・だっけか? これはその試作品でまた改良の余地がありそうだが、一度使ってみてくれ。感想がほしんだ」
そう言われて、手渡された散弾銃に触れると、その構造はいつも使っている村田銃よりかは、短い印象を受ける。そして、スミスの旦那からこの銃、専用の弾も手渡される。
「こいつは、そいつ専用の弾だ。設計図には、多数の小さい弾丸を詰め込んだ実砲と書いてある通り、発射したらその弾が拡散して広範囲に散らばるって仕組みよ」
スミスの旦那はニヤリと笑う。俺もその真意を理解し、ニヤりと笑う。
「それじゃあ、お望み通り、第一発目はカモ狩りとでもいくか」
そう言いながら、俺はヘカテリーナを連れて洞窟の近くにある湖へと向かうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます