第32話:潰し合い
フランドル王国の王都には凶悪な盗賊団が次々と集まっていた。
義賊団の頭領ケインに踊らされた愚かな連中だ。
フランドル王国の王城内には莫大な歴代の財宝がある。
なのにルーサン皇国に処罰されたフランドル王国には、その莫大な財宝を護るだけの戦力がない。
ケインが流した情報を多くの凶盗団が信じたのだ。
実際に情報収集のためにケインの義賊団が王都に入り込んでいる。
日頃ケインに盗みの邪魔をされている凶盗団は先を争って王城に人を入れた。
凶盗団のなかにはルーサン皇国の有力貴族が後ろにいる組織もあったのだ。
金の為なら凶悪な賊を使って民を殺し財貨を奪う事も平気で行うのだ。
そんな連中がフランドル王国の王城内で出会えば即座に殺し合いになる。
殺さずを誓った隠形に優れた腕利きの情報収集専門職ではないのだ。
口封じのためなら直ぐに人殺しをする隠形よりも殺害に力を入れた連中だ。
邪神教の神官に素性を知られるのは直ぐだった。
邪神教の神官も加わっての大乱戦になった。
「ようやくここまで来たのだ、邪魔は絶対にさせない。
もう少しでルードヴィヒやラーガルスを超える力が得られるのだ。
盗賊ごとき我が力を得るための生贄にしてくれる」
フランドル王国王宮神官長のリトラストが表だって動き出した。
王都の民を全員生贄にする魔法陣が完成目前だったのだ。
ここまできて盗賊に邪魔されるなど我慢できなかった。
今日までは目くらましに利用していたフランドル王家のジェラルド国王、マティルド王妃、ロバート王太子を使い潰してでも盗賊を撃退する覚悟だった。
だが凶盗団の中には、ルーサン皇国の有力貴族が送り込んだ腕利きの騎士が頭領を務める団もあった。
彼らは一国が代々集めた財宝が手に入れられる好機と、貴族家から多くの援軍を得ていたのだ。
単なる凶盗団というよりは、侯爵家や辺境伯家が持つ騎士団と言えるほどだ。
この時は三つの盗賊騎士団が王城内で死闘を繰り広げていた。
自分の身体に下級魔族を召喚させられたジェラルド国王、マティルド王妃、ロバート王太子が、その力を遺憾なく発揮して暴れ回っていた。
有力貴族家から密かに派遣された盗賊騎士団が全く歯が立たない状態だった。
まさに惨殺と言える状況になっていた。
その惨劇は王城内に留まらなかった。
恐怖のあまり騎士ともあろう者が下級魔族を恐れて背中を見せて逃げ出した。
まあ、主君の命とは言え平気で民を殺傷して盗みを働く性根の者だ。
命惜しさに敵に背中を見せてもおかしくはなかった。
だが臆病な盗賊騎士団が城内から逃げ出した事で、城下、王都にも真相が広まり、王都の民を全員生贄にする魔法陣が完成する前に民が逃げ出したのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます