第30話:権力闘争・マチルダ視点

「マチルダ様、ご安心下さい、皇帝陛下の側近が三人処刑されました。

 これで呪術攻撃をしかけたモノは全員処分されました」


 皇太子殿下の侍女が一連の陰謀の結果を教えてくれました。

 どうやら皇太子殿下の言っておられた通りの謀略だったようです。

 皇帝陛下も色々と大変なのですね。

 国の大小や強弱など関係なく、どの国でも同じような事があるのですね。

 それにしても、私は本当にこの宮にいていいのでしょうか。


 全て皇太子殿下にお任せすると決めたのに、何かあると迷っていまいます。

 皇太子殿下には気がつかれないように気を付けていますが、迷っています。

 皇太子殿下にご迷惑がかからないように、黙って姿を隠すべきではないのかと、迷ってしまうのです。


「マチルダ様、皇太子殿下は三日ほど政務で遅くなられるそうです。

 その間お相手するように命を受けております。

 何かなさりたいことはありますか」


 侍女が色々と気にかけてくれます。

 でも心のままに全て口に出してしまったら問題があります。

 侍女は全て皇太子殿下に伝える事でしょう。

 下手な事を口にすると殿下にご負担をかけてしまいます。

 自分自身がどんな決断をするのかは分かりませんし、結局どうなるかも分かりませんが、どのような事になっても大丈夫なようにしておかないといけません。


「ではまた帝王学の勉強をしたいので、その手配をお願いします」


「承りました、直ぐに手配させていただきます。

 魔術と呪術の時間をもうけておきます」


「頼みますね」


 皇太子殿下の侍女は全員がとても優秀です。

 だれもかれもフランドル王国なら最優秀の侍女と評価された事でしょう。

 私が口にしない心の中でだけ望んでいた事までかなえてくれます。

 実は魔術と呪術も勉強したかったのです。

 魔術も呪術も皇国では身を護るために学ぶ貴族が多いそうです。


 フランドル王国では魔術と呪術は基礎しか学ぶ機会がありませんでしたが、皇太子宮では望むだけ希望する分野の勉強をする事ができます。

 でもここまで優秀な侍女だと少し心配になってしまいます。

 私の迷い、黙って姿を消すと言う考えを見抜かれてしまっているかもしれません。

 まあ、協力者も無しに皇太子宮から抜ける事など不可能ですが。


「マチルダ様、まずは私が呪術の続きを教えさせていただきます。

 前回もお伝えしましたが、マチルダ様は呪術の才能をお持ちです。

 それを生かされれば少々の敵など一人でも撃退可能です」


 前回も才能があると言われましたが、少々複雑な気持ちですね。

 臆病な者ほど呪術の適性があると言うのですから。

 でも、複雑な心境などと言ってはいられません。

 才能があるのなら急いで学ばなければいけません。

 少しでも実力をつけて皇太子殿下のお役に立てるようになるのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る