第11話:邪神殿の大神官
「どうでございましたか、ルードヴィヒ大神官様。
オリアンナは使い物になりますか」
オリアンナに神の教えを諭し、マチルダ嬢の慈悲に縋るように言い聞かせていた大神官を、ラーガルス神官長が待っていた。
「くっくっくっくっ、十分だ、あの邪悪さなら十分使い物になるぞ」
「それはようございました。
先程王宮のリトラスト王宮神官長からも使者が参りました。
ロバート王太子もマティルド王妃も下劣極まる性格のようです。
魔族の依り代にするには十分な邪悪さのようでございます」
「それはよかった、よかったが、まだまだだな。
並の魔族の依り代程度では満足できん。
もっともっと恨み辛みを膨らませ、上級魔族や魔将軍の依り代になれるくらに邪悪になってもらわなければな」
「確かにその通りではございますが、本当にできますでしょうか。
魔将軍の依り代にするには小者過ぎませんか、大神官様」
「これからもっともっと悪意を育てればいい。
生まれ持って他人を羨み妬み奪おうとする醜悪な性格だ。
我らの仲間に相応しいではないか」
「まあ、確かにその通りではありますが、時間も手間もかかりますね」
「それは当然のことよ。
偉大なる我らが神、邪神様を復活させようというのだ。
そうそう簡単に出来る事ではない。
まずは人間を依代にして魔族を召喚する。
召喚した魔族を邪神様の依代になれる強力な魔王を育てる。
長き道のりになる」
「左様でございますな、千里の道も一歩よりと先人も申しておりますな」
「くっくっくっくっ、我ら邪神教徒が先人の教えを例えに使うか。
笑える話よな、ではまず王都の娘を攫って王太子に殺させるか。
せっかくの機会だ、生贄にする刺青を忘れないようにな」
「それは幾ら何でも大丈夫でございましょう。
リトラスト王宮神官長が生贄につける刺青を忘れるとは思えません」
「リトラスト王宮神官長は邪神教徒に相応しい邪悪さを持っている。
自分の力を増すために生贄を横取りするくらいは平気でやる。
その点も気を付けておかないと足元をすくわれるぞ。
私もお前もな、ラーガルス神官長」
「それを私に言われますか、大神官様。
本来なら邪神様に捧げるべき生贄を、自分のために使われている大神官様が」
「くっくっくっくっ、邪神様の信徒に相応しい行動であろう。
私は今の地位を誰かに譲る気も捨てる気もないのだよ。
リトラスト王宮神官長が大神官の地位を狙うと言うのなら、彼を生贄にして我が力とするだけだ、ラーガルス神官長」
「それは私への警告ですか、大神官様」
「分かっているではないか、邪神様を蘇らせるために手足となる信徒は必要だ。
魔族の依代にする人間も必要だ。
だが私の地位を脅かす人間は不要だ。
覚えておけ、ラーガルス神官長」
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