第7話:捕虜

「うっわああああ、やれ、ころせ、殺してしまえ」


 ロバート王太子は慌てふためいていた。

 狼狽の極致といっていい状態だった。

 まともな判断などとてもできない状態になっていた。

 ただ本能的にサーニン皇太子を殺すしかないと分かっていた。

 謝っても許されず逃げる事もできないと分かっていた。

 だからその場にいる自国の貴族や騎士に命令したのだが、誰も従わない。


「恥知らずな卑怯者が」


 サーニン皇太子付き男性守護騎士ラルフが一瞬でロバート王太子に近づいた。

 殺さない程度に、だが心底思い知る程度の力でぶちのめした。

 何も食べられないように、余計な事が話せないように下顎の骨を粉砕した。

 次いで逃げられないように両膝関節を粉砕した。

 万が一にも武器を持って抵抗しないように、両手を粉砕した。


「ウギャアアアアアア」


 骨を粉砕させれるたびに絶叫をあげる。

 あまりの激痛に気を失う事もできない。

 会場にいる全員が恐怖を覚えて震えるほどの絶叫だった。

 だがそれだけではすまなかった。

 サーニン皇太子の視線を受けた女性守護騎士オルガも動いていた。


「オリアンナ嬢、今日の事について嘘偽りなく全てを話していただきます。

 僅かでも嘘偽りがあれば、皇太子殿下侮辱罪で処刑します。

 分かっていますね、簡単に処刑してもらえるとは思わないでください。

 真実を話していただくまで、じっくりと調べさせていただきますよ。

 皇国の歴史にある全ての方法を使わせていただいてですよ、分かっていますね」


 オルガは遠回しに拷問するぞと脅かしていた。

 今回の件を全部知っているのだぞとも伝えていた。

 それは正しくオリアンナに伝わっていた。

 何故ならオルガの言葉だけでなく、サーニン皇太子の視線もあったからだ。

 冷たく凍り付くような視線、まるで塵屑でも見るような視線。


 保身の嘘を口にしたらその場で舌を引き千切られると確信できた。

 簡単には殺してもらえず、死の直前まで拷問を加えては魔術で癒す。

 真実を話すまで永遠に拷問が繰り返される。

 大陸で有名なルーサン皇国の拷問だった。

 オリアンナはあまりの恐怖にガタガタと震えだし、その場で失禁してしまった。


「い、い、いい、いいます。

 す、、す、すべ、すべて、はなします。

 ぜん、ぜんぶ、おうたいしの企みです。

 わ、わ、わた、わたしとこんやくするために、マチルダを陥れいようとしました。

 わたしも加わっていました。

 でも、でも、でも、私は巻き込まれただけで、ウッギャアああああ」


 サーニン皇太子は全く表情を変えず、眉一つ動かすことなく罰を与えた。

 オリアンナが保身で嘘をついたと判断したからだ。

 聞き返すことなく言い直させることなく罰を与えた。

 自らの指でオリアンナの片目を潰したのだ。


「本当のことを言いなさい。

 次に嘘を口にしたら、もう一つの目も潰しますよ。

 分かりますね、オリアンナ嬢」

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