最優秀な双子の妹に婚約者を奪われました。
克全
第1章
第1話:婚約披露宴
とても華やかな婚約披露宴だった。
大陸中から王侯貴族が招待されていた。
大陸でもそれなりの歴史と武力を誇るフランドル王家が、力を誇示するために多くの王侯貴族を招待していたからだ。
「まあ、何を青い顔をされていますの、マチルダ御姉様。
まるで屠殺される前の豚のようですわよ、ホッホホホホ」
今日幼馴染のロバート王太子と婚約を披露するはずのマチルダ。
だがマチルダは知っていた。
ロバートが妹のオリアンナに恋焦がれている事を。
オリアンナと結婚するためならどのような手段も使う性格だという事を。
地味で無能で全ての点で妹のオリアンナに劣る癖に、ファルド公爵家の長女というだけで婚約者となったマチルダを、殺したいほど増悪している事を。
マチルダは長女に生まれたことを恨むしかなかった。
たった数分の違いで長女にさせられてしまった。
その数分が双子の妹であるオリアンナに比較され馬鹿にされる原因だった。
姉であるにもかかわらず全ての点で妹よりも劣る事を馬鹿にされてしまう。
妹に生まれていれば全てに劣っていても許されるのに。
継承権がつきまとう王侯貴族では、長女と次女では天と地ほどの違いがある。
しかも双子なのに容姿までが全く違うのだ。
姉のマチルダは父親に似ている。
骨太な身体と黒髪と黒瞳を引き継いでいる。
性格も大人しく心優しい、いや気が弱くて他人に逆らえない。
父親であるファルド公爵も同じように妻の言いなりだった。
それに比べて妹のオリアンナは母親に似ている。
華奢な体に金髪と碧眼を受け継いでいる。
性格はよく言えば勝気、悪く言えば負けず嫌いでどんな手段を使っても勝つ。
だからこそ未来の王妃の地位を狙って姉を引きずり降ろそうとしていた。
ロバート王太子を誘惑してマチルダを貶める予定だった。
そしてその事に何の痛痒も感じていなかった。
「やあ、どうされたのかな、顔色がよくないぞ。
今宵は貴女が主役ではないか。
辛いようなら控室で休んでいればいい」
大陸で最も長い歴史を誇り、華やかな文化を持つルーサン皇国の皇太子サーニンが、ぶっきらぼうだが愛情のこもった言葉をかける。
その優しさにマチルダは思わず涙を浮かべてしまった。
「ちぃ、余計な事をする」
華奢な身体と絶世の美貌とはかけ離れた、とても邪悪な内心を持つ妹のオリアンナは、姉のマチルダがこれから起こる事を恐れる姿を見て愉しんでいた。
それを邪魔するサーニン皇太子に苛立ちを覚えた。
だが直ぐにその考えを切り替えた。
サーニン皇太子に見初められたら、大陸最強国の皇后になれるのだ。
自分が皇后になって皇帝を操れば、大陸制覇も可能だと思ったのだ。
「御姉様、いかがいたされたのですか。
もしかして緊張で苦しくなられたのですか。
わたくしが控室にお連れ致しましょうか」
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